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1眼科用薬

U222022/03/24 16:38

眼科用薬ー1

眼の不調は、一般的に自覚されるものとして、目の疲れやかすみ、痒みなどがある。眼科用薬は、これらの症状の緩和を目的として、結膜嚢(結膜で覆われた眼瞼(がんけん=まぶた)の内側と眼球の間の空間)に適用する外用薬(点眼薬、洗眼薬、コンタクトレンズ装着液)である。なお、コンタクトレンズ装着液については、配合成分としてあらかじめ定められた範囲内の成分のみを含む等の基準に当てはまる製品については、医薬部外品として認められている。

一般用医薬品の点眼薬は、その主たる配合成分から、人工涙液、一般点眼薬、抗菌性点眼薬、アレルギー用点眼薬に大別される。

人工涙液は、涙液成分を補うことを目的とするもので、目の疲れや乾き、コンタクトレンズ装着時の不快感等に用いられる。一般点眼薬は、目の疲れや痒み、結膜充血等の症状を抑える成分が配合されているものである。アレルギー用点眼薬は、花粉、ハウスダスト等のアレルゲンによる目のアレルギー症状(流涙、目の痒み、結膜充血等)の緩和を目的とし、抗ヒスタミン成分や抗アレルギー成分が配合されているものである。抗菌性点眼薬は、抗菌成分が配合され、結膜炎(はやり目)やものもらい(麦粒腫)、眼瞼炎(まぶたのただれ)等に用いられるものである。

洗眼薬は、目の洗浄、眼病予防(水泳のあと、埃(ほこり)や汗が目に入ったとき等)に用いられるもので、主な配合成分として涙液成分のほか、抗炎症成分、抗ヒスタミン成分等が用いられる。

 

【点眼薬における一般的な注意】 点眼薬の使用にあたっての一般的な注意に関する出題については、以下の内容から作成のこと。

 点眼方法

点眼薬は、結膜嚢に適用するものであるため、通常、無菌的に製造されている。

 点眼の際に容器の先端が眼瞼や睫毛(しょうもう=まつげ)に触れると、雑菌が薬液に混入して汚染を生じる原因となるため、触れないように注意しながら1滴ずつ正確に点眼する。

1滴の薬液の量は約50μLであるのに対して、結膜嚢の容積は30μL程度とされており、一度に何滴も点眼しても効果が増すわけではなく、むしろ薬液が鼻腔内へ流れ込み、鼻粘膜や喉から吸収されて、副作用を起こしやすくなる。

点眼後は、数秒間、眼瞼を閉じて、薬液を結膜嚢内に行き渡らせる。その際、目頭を押さえると、薬液が鼻腔内へ流れ込むのを防ぐことができ、効果的とされる。

 保管及び取扱い上の注意

別の人が使用している点眼薬は、容器の先端が睫毛等に触れる等して中身が汚染されている可能性があり、共用することは避けることとされている。

また、点眼薬の容器に記載されている使用期限は、未開封の状態におけるものであり、容器が開封されてから長期間を経過した製品は、使用を避けるべきである。

 コンタクトレンズ使用時の点眼法

コンタクトレンズをしたままでの点眼は、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズに関わらず、添付文書に使用可能と記載されてない限り行うべきでない。

通常、ソフトコンタクトレンズは水分を含みやすく、防腐剤(ベンザルコニウム塩化物、パラオキシ安息香酸ナトリウム等)などの配合成分がレンズに吸着されて、角膜に障害を引き起こす原因となるおそれがあるため、装着したままの点眼は避けることとされている製品が多い。ただし、1回使い切りタイプとして防腐剤を含まない製品では、ソフトコンタクトレンズ装着時にも使用できるものがある。

 

【眼科用薬に共通する主な副作用】 局所性の副作用として、目の充血や痒み、腫れがあらわれることがある。これらの副作用は、点眼薬が適応とする症状と区別することが難しい場合があり、点眼用薬を一定期間使用して症状の改善がみられない場合には、副作用の可能性も考慮し、漫然と使用を継続せずに、専門家に相談がなされることが重要である。

全身性の副作用としては、皮膚に発疹、発赤、痒み等が現れることがある。この場合、一般の生活者においては、原因が眼科用薬によるものと思い至らず、アレルギー用薬や外皮用薬が使用されることがあるので、医薬品の販売に従事する専門家においては、購入者等に対して適切な助言を行っていくことが重要である。

 

【相互作用】 医師から処方された点眼薬を使用している場合には、一般用医薬品の点眼薬を併用すると、治療中の疾患に悪影響を生じることがあり、また、目のかすみや充血等の症状が、治療中の疾患に起因する可能性や、処方された薬剤の副作用である可能性も考えられる。医師の治療を受けている人では、一般用医薬品の点眼薬を使用する前に、その適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきである。

 

【受診勧奨】 一般用医薬品の点眼薬には、緑内障の症状を改善できるものはなく、目のかすみが緑内障による症状であった場合には効果が期待できないばかりでなく、配合されている成分によっては、緑内障の悪化につながるおそれがある場合がある。

また、目の痛みが激しい場合には、急性緑内障、角膜潰瘍、眼球への外傷等を生じている可能性があり、その場合、すみやかに眼科専門医による適切な処置が施されなければ、視力障害等の後遺症を生じるおそれがある。

目の症状には、視力の異常、目(眼球、眼瞼等)の外観の変化、目の感覚の変化等がある。これらの症状が現れた時、目そのものが原因であることが多いが、目以外の病気による可能性もあり、特に脳が原因であることが多く知られている。

 

医薬品の販売等に従事する専門家においては、購入者等に対して、目に何らかの異常が現れたときには医療機関を受診し、専門医の診療を受けるように促すべきである。

 

眼科用薬ー2

1)目の調節機能を改善する配合成分

自律神経系の伝達物質であるアセチルコリンは、水晶体の周りを囲んでいる毛様体に作用して、目の調節機能に関与している。目を酷使すると、アセチルコリンを分解する酵素(コリンエステラーゼ)の働きが活発になり、目の調節機能が低下し、目の疲れやかすみといった症状を生じる。

ネオスチグミンメチル硫酸塩は、コリンエステラーゼの働きを抑える作用を示し、毛様体におけるアセチルコリンの働きを助けることで、目の調節機能を改善する効果を目的として用いられる。

 

2)目の充血、炎症を抑える配合成分

a)アドレナリン作動成分

結膜を通っている血管を収縮させて目の充血を除去することを目的として、ナファゾリン塩酸塩、ナファゾリン硝酸塩、エフェドリン塩酸塩、テトラヒドロゾリン塩酸塩等のアドレナリン作動成分が配合されている場合がある。

緑内障と診断された人では、眼圧の上昇をまねき、緑内障を悪化させたり、その治療を妨げるおそれがあるため、使用前にその適否につき、治療を行っている医師又は治療薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきである。

連用又は頻回に使用すると、異常なまぶしさを感じたり、かえって充血を招くことがある。また、長引く目の充血症状は、目以外の異変を含む、重大な疾患による可能性も考えられるため、5~6日間使用して症状の改善がみられない場合には、漫然と使用を継続することなく、医療機関(眼科)を受診する必要性を含め、専門家に相談がなされるべきである。

 

b)抗炎症成分

 リゾチーム塩酸塩、グリチルリチン酸二カリウム

比較的緩和な抗炎症作用を示す成分として、リゾチーム塩酸塩やグリチルリチン酸二カリウムが用いられる。これら成分の働き等に関する出題については、-1(かぜ薬)を参照して作成のこと。ベルベリンによる抗炎症作用を期待して、ベルベリン硫酸塩が配合されている場合もある。

リゾチーム塩酸塩については、点眼薬の配合成分として使用された場合であっても、まれにショック(アナフィラキシー)のような全身性の重大な副作用を生じることがある。リゾチーム塩酸塩が配合された医薬品や鶏卵によるアレルギー症状を起こしたことがある人では、使用を避ける必要がある。

 イプシロン-アミノカプロン酸

炎症の原因となる物質の生成を抑える作用を示し、目の炎症を改善する効果を期待して用いられる。

 プラノプロフェン

非ステロイド性抗炎症成分(-2)-(b)参照。)であり、炎症の原因となる物質の生成を抑える作用を示し、目の炎症を改善する効果を期待して用いられる。

 

c)組織修復成分

炎症を生じた眼粘膜の組織修復を促す作用を期待して、アズレンスルホン酸ナトリウム(水溶性アズレン)やアラントインが配合されている場合がある。

 

d)収斂(しゅうれん)成分

眼粘膜のタンパク質と結合して皮膜を形成し、外部の刺激から保護する作用を期待して、硫酸亜鉛水和物が配合されている場合がある。

 

眼科用薬ー3

3)目の乾きを改善する配合成分

結膜や角膜の乾燥を防ぐことを目的として、コンドロイチン硫酸ナトリウムが用いられる。同様の効果を期待して、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール(部分鹸物)が配合されている場合もある。

ヒアルロン酸ナトリウムは、有効成分としてではなく添加物(粘稠(ねんちゅう)化剤)として用いられ、コンドロイチン硫酸ナトリウムと結合することにより、その粘稠性を高める。

 

4)目の痒みを抑える配合成分

a)抗ヒスタミン成分

アレルギーによる目の痒みの発生には、生体内の伝達物質であるヒスタミンが関与している((内服アレルギー用薬)参照)。また、結膜に炎症を生じたような場合も、眼粘膜が刺激に対して敏感になり、肥満細胞からヒスタミンが遊離して痒みの症状を生じやすくなる。

ヒスタミンの働きを抑えることにより、目の痒みを和らげることを目的として、ジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ケトチフェン等の抗ヒスタミン成分が配合されている場合がある。鼻炎用点鼻薬と併用した場合には、眠気が現れることがあるため、乗物又は機械類の運転操作を避ける必要がある。

その他、外用薬で用いられる抗ヒスタミン成分に関する出題については、(皮膚に用いる薬)を参照して作成のこと。

b)抗アレルギー成分

クロモグリク酸ナトリウムは、肥満細胞からのヒスタミン遊離を抑える作用を示し((鼻に用いる薬)参照。)、花粉、ハウスダスト(室内塵(じん))等による目のアレルギー症状(結膜充血、痒み、かすみ、流涙、異物感)の緩和を目的として、通常、抗ヒスタミン成分と組み合わせて配合される。

アレルギー性でない結膜炎等に対しては無効であり、アレルギーによる症状か他の原因による症状かはっきりしない人(特に、片方の目だけに症状がみられる場合や、目の症状のみで鼻には症状がみられない場合、視力の低下を伴うような場合)では、使用する前にその適否につき、専門家に相談する等、慎重な考慮がなされるべきである。2日間使用して症状の改善がみられないような場合にも、アレルギー以外の原因による可能性が考えられる。

点眼薬の配合成分として使用された場合であっても、まれに重篤な副作用として、アナフィラキシーを生じることがある。

その他、クロモグリク酸ナトリウムに関する出題については、(鼻に用いる薬)を参照して作成のこと。

 

5)抗菌作用を有する配合成分

a)サルファ剤

細菌感染(ブドウ球菌や連鎖球菌)による結膜炎やものもらい(麦粒腫)、眼瞼炎などの化膿性の症状の改善を目的として、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム等のサルファ剤が用いられる。なお、すべての細菌に対して効果があるというわけではなく、また、ウイルスや真菌の感染に対する効果はないので、3~4日使用しても症状の改善がみられない場合には、眼科専門医の診療を受けるなどの対応が必要である。

サルファ剤によるアレルギー症状を起こしたことがある人では、使用を避けるべきである。

b)ホウ酸

洗眼薬として用時水に溶解し、結膜嚢の洗浄・消毒に用いられる。また、その抗菌作用による防腐効果を期待して、点眼薬の添加物(防腐剤)として配合されていることもある。

6)その他の配合成分(無機塩類、ビタミン類、アミノ酸)と配合目的

a)無機塩類

涙液の主成分はナトリウムやカリウム等の電解質であるため、配合成分として塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等が用いられる。

b)ビタミン成分

 ビタミンA(パルミチン酸レチノール、酢酸レチノール等)

ビタミンAは、視細胞が光を感受する反応に関与していることから、視力調整等の反応を改善する効果を期待して用いられる。

 ビタミンB2(フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム等)

リボフラビンの活性体であるフラビンアデニンジヌクレオチドは、角膜の酸素消費能を増加させ組織呼吸を亢進(こうしん)し、ビタミンB2欠乏が関与する角膜炎に対して改善効果を期待して用いる。

 パンテノール、パントテン酸カルシウム等

パンテノール、パントテン酸カルシウム等は、自律神経系の伝達物質の産生に重要な成分であり、目の調節機能の回復を促す効果を期待して用いられる。

 ビタミンB6(ピリドキシン塩酸塩等)

ビタミンB6は、アミノ酸の代謝や神経伝達物質の合成に関与していることから、目の疲れ等の症状を改善する効果を期待して用いられる。

 ビタミンB12(シアノコバラミン等)

目の調節機能を助ける作用を期待して用いられる。

 ビタミンE(トコフェロール酢酸エステル等)

末梢の微小循環を促進させることにより、結膜充血、疲れ目等の症状を改善する効果を期待して用いられる。

c)アミノ酸成分

新陳代謝を促し、目の疲れを改善する効果を期待して、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム等が配合されている場合がある。