• 法令上の制限税その他ー2.建築基準法
  • 7.建築物の高さの制限 (集団規定-4)
  • 建築物の高さの制限 (集団規定-4)
  • Sec.1

1建築物の高さの制限 (集団規定-4)

堀川 寿和2021/11/25 13:30

都市計画区域および準都市計画区域内においては、建築物の高さも制限される。

斜線制限

 『斜線制限』とは、建築物の各部分の高さを制限するものであり、簡単にいうと、ある地点から上空に向かって「斜めに」線を引き、その中にしか建築物を建ててはならないという制限である。日照や、通風、採光を確保しようという目的で適用される。

 斜線制限には、道路斜線制限、隣地斜線制限および北側斜線制限の3種類がある。それぞれ、道路高さ制限、隣地高さ制限および北側高さ制限と呼ばれることもあるが、同じものを指している。

 斜線制限については、その適用区域が重要である。


(1) 道路斜線制限(道路高さ制限)

 道路斜線制限は、道路と道路に面する建築物の日照、通風、採光を確保することを目的とする。具体的には、道路の反対側から一定のこう配の斜線を引き、その斜線の中にしか建物を建てられないとするものである。

 道路斜線制限は、すべての用途地域および用途地域の指定のない区域内の建築物に適用される。


(2) 隣地斜線制限(隣地高さ制限)

 隣地斜線制限は、隣地の日照、通風、採光を確保することを目的とする。具体的には、隣地境界線上の20mまたは31mの高さを基点とし、そこから一定のこう配の斜線を引き、その中にしか建物を建てられないとするものである。

 隣地斜線制限は、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域および田園住居地域には適用されない。これらの地域には、上記の10mまたは12mの高さ制限があるからである。


(3) 北側斜線制限(北側高さ制限)

 北側斜線制限は、北側の隣地の日照、通風、採光を確保することを目的とする。具体的には、北側の隣地境界線上の5mまたは10mの高さを基点とし、そこから真南方向に一定のこう配の斜線を引き、その中にしか建物を建てられないとするものである。

 北側斜線制限は、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域、第一種中高層住居専用地域および第二種中高層住居専用地域に適用される。これらの用途地域は、住環境の保護を徹底した用途地域であるため、その目的に応じた厳しい規制が必要となるのである。

 ただし、第一種中高層住居専用地域および第二種中高層住居専用地域については、後述の「日影規制」が適用される場合は、日影規制のほうが優先し、北側斜線制限は適用されない。



【斜線制限の適用区域(まとめ)】

〇…適用あり   △…適用あり(日影規制が適用される場合は適用なし)   ×…適用なし


Point 建築物が2以上の用途地域にわたる場合は、各用途地域に属する建築物の部分ごとに、それぞれの用途地域の斜線制限が適用される。


日影による中高層の建築物の高さの制限(日影規制)

 日影による中高層の建築物の高さの制限(日影規制)は、高層マンションなどの建築物の周りの敷地の日照を確保して居住環境を保護することを目的としている。


(1) 規制内容

 日影規制とは、冬至日における建築物が周りの敷地に影を落とす時間(日影時間)を一定時間以内とするように規制するものである。具体的な規制時間は、地方公共団体の条例により指定される。


(2) 対象区域・対象建築物

 日影規制の対象区域は、地方公共団体が条例で指定する区域である。ただし、商業地域、工業地域および工業専用地域には対象区域を指定することができない。商業地域、工業地域および工業専用地域は、居住環境の保護よりも商業や工業の利便性のほうが重視されるためである。

 日影規制の対象となる建築物は、対象区域内にある次の建築物である。


地域・区域対象区域対象建築物
第一種低層住居専用地域
第二種低層住居専用地域
田園住居地域
地方公共団体の条例で指定する区域① 軒の高さが7mを超える建築物または地階を除く階数が3以上の建築物
第一種中高層住居専用地域
第二種中高層住居専用地域
第一種住居地域
第二種住居地域
準住居地域
近隣商業地域
準工業地域
地方公共団体の条例で指定する区域② 高さが10mを超える建築物
用途地域の指定のない区域地方公共団体の条例で指定する区域上記①または②のうち、地方公共団体が条例で指定するもの
商業地域
工業地域
工業専用地域
対象区域を指定することができない(日影規制は適用されない)

 同一の敷地内に2以上の建築物がある場合は、これらの建築物を1の建築物とみなして、日影規制が適用される。たとえば、近隣商業地域内における同一の敷地内に高さが12mの建築物と8mの建築物がある場合は、高さが8mの建築物にも日影規制が適用されるということである。


(3) 日影規制の適用除外

 次の①②のいずれかに該当する場合においては、日影規制は適用されない。

① 特定行政庁が土地の状況等により周囲の居住環境を害するおそれがないと認めて建築審査会の同意を得て許可した場合
② ①の許可を受けた建築物を周囲の居住環境を害するおそれがないものとして政令で定める位置および規模の範囲内において増築し、改築し、もしくは移転する場合


(4) 日影規制の対象区域外への日影規制の適用

 対象区域外にある高さが10m超える建築物で、冬至日において、対象区域内の土地に日影を生じさせるものは、当該対象区域内にある建築物とみなして、日影規制が適用される。たとえば、商業地域内にある高さが12mの建築物が、冬至日において日影規制の対象区域内に日影を生じさせるときは、本来なら対象とならない商業地域内にある建築物にも日影規制が適用されるということである。