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1人体の構造と働き

U222022/03/24 10:07

人体の構造と働き

ヒトの体は、細胞が集まって構成されており、関連する働きを持つ細胞が集まって組織を作り、複数の組織が組み合わさって一定の形態を持ち、特定の働きをする器官が形成される。器官が互いに連絡して協働し、全体として一つの機能を持つ場合、それらを器官系という。

また、細胞と細胞の間には、カルシウム化合物、粘液物質、膠原(こうげん)線維等の物質が存在し、これを細胞間質という。

 

胃・腸、肝臓、肺、心臓、腎臓などの内臓器官ー1

1)消化器系

飲食物を消化して生命を維持していくため必要な栄養分として吸収し、その残滓(ざんし)を体外に排出する器官系である。これに関わる器官として、次のものがある。

 消化管:口腔(くう)、咽頭、食道、胃、小腸、大腸、肛門

 消化腺:唾液腺、肝臓、胆嚢(のう)、膵(すい)臓

消化管は、口腔から肛門まで続く管で、平均的な成人で全長約9mある。飲食物はそのままの形で栄養分として利用できず、消化管で吸収される形に分解する必要があるが、これを消化という。消化には、消化腺から分泌される消化液による化学的消化と、咀嚼(そしゃく)(食物を噛(か)み、口腔内で粉砕すること)や消化管の運動による機械的消化とがある。

 化学的消化:消化液に含まれる消化酵素の作用によって飲食物を分解する。

 機械的消化:口腔における咀嚼や、消化管の運動などによって消化管の内容物を細かくして消化液と混和し、化学的消化を容易にする。

 

a) 口腔

 歯

歯は、歯周組織(歯肉、歯根膜、歯槽骨、セメント質)によって上下の顎の骨に固定されている。歯槽骨の中に埋没している歯の部分を歯根、歯頚(しけい)(歯肉線のあたり)を境に口腔に露出する部分を歯冠という。

歯冠の表面はエナメル質で覆われ、体で最も硬い部分となっている。エナメル質の下には象牙質と呼ばれる硬い骨状の組織があり、神経や血管が通る歯髄を取り囲んでいる。歯の齲蝕(うしょく)が象牙質に達すると、神経が刺激されて、歯がしみたり痛みを感じるようになる。

 舌

舌の表面には、舌乳頭という無数の小さな突起があり、味覚を感知する部位である味蕾(みらい)が分布している。舌は味覚を感知するほか、咀嚼された飲食物を撹拌(かくはん)して唾液と混和させる働きがある。

 唾液腺

唾液を分泌し、食物を湿潤させてかみ砕きやすくし、また、咀嚼物を滑らかにして嚥下(えんげ)を容易にする。唾液には、デンプンをデキストリンや麦芽糖に分解する消化酵素(プチアリン。唾液アミラーゼともいう。)が含まれ、また、味覚の形成にも重要な役割を持つ。

 

唾液は、リゾチーム等の殺菌・抗菌物質を含んでおり、口腔粘膜の保護・洗浄、殺菌等の作用もある。また、唾液によって口腔内はpHがほぼ中性に保たれ、酸による歯の齲蝕を防いでいる。

 

 

胃・腸、肝臓、肺、心臓、腎臓などの内臓器官ー2

b) 咽頭、食道

咽頭は、口腔から食道に通じる食物路と、呼吸器の気道とが交わるところである。飲食物を飲み込む運動(嚥下)が起きるときには、喉頭の入り口にある弁(喉頭蓋)が反射的に閉じることにより、飲食物が喉頭や気管に流入せずに食道へと送られる。

 

食道は喉もとから上腹部のみぞおち近くまで続く、直径1~2cmの管状の器官で、消化液の分泌腺はない。嚥下された飲食物は、重力によって胃に落ち込むのでなく、食道の運動によって胃に送られる。食道の上端と下端には括約筋があり、胃の内容物が食道や咽頭に逆流しないように防いでいる。胃液が食道に逆流すると、むねやけが起きる。