• 法令上の制限税その他ー2.建築基準法
  • 6.建蔽率・容積率等の制限 (集団規定-3)
  • 建蔽率・容積率等の制限 (集団規定-3)
  • Sec.1

1建蔽率・容積率等の制限 (集団規定-3)

堀川 寿和2021/11/25 11:27

建蔽率の制限

(1) 建蔽率

建蔽率とは、建築物の建築面積の敷地面積に対する割合をいう。

※ 建築面積とは、建築物の外壁またはこれに代わる柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積である。



 「建蔽率(けんぺいりつ)」とは、敷地のどの範囲まで建築物を建築できるかを数値で表したものである。たとえば、100㎡の敷地に60㎡の建物を建てた場合、建蔽率は100分の60であるから、60%という具合に計算する。

 自分が権利を持っている土地だからといって、敷地いっぱいの建築物を建ててもよいということになると、日照や通風、そして「火災の延焼の危険」について大きな問題を生じることになる。そこで、敷地の中に建築物が建っていない部分を確保するために、建築物の集中する都市計画区域および準都市計画区域内においては、建蔽率が制限されるのである。


(2) 建蔽率の制限

  都市計画区域および準都市計画区域内における建蔽率の最高限度は、次のとおり。


(3) 建蔽率の制限の緩和

 次の①または②のいずれかに該当する場合は、上記の数値に10分の1を加えた数値が建蔽率の最高限度となる。また、次の①および②の両方に該当する場合は、上記の数値に10分の2を加えた数値が建蔽率の最高限度となる。

① 次のイ)またはロ)に該当する建築物
イ) 建蔽率の限度が10分の8とされている地域外で、かつ、防火地域内にある「耐火建築物等」
ロ) 準防火地域内にある「耐火建築物等」または「準耐火建築物等」
②街区の角にある敷地またはこれに準ずる敷地で特定行政庁が指定するものの内にある建築物
 「防火地域内の耐火建築物等」または「準防火地域内の耐火建築物等または準耐火建築物等」であれば燃えにくいので、建蔽率を少々緩和しても延焼防止に差し支えないと考えられ、また、角地であれば、延焼防止の点でも日照・通風の点でも、支障が少ないと考えられるからである。


【防火・準防火地域内における延焼防止性能の高い建築物の建蔽率の緩和・適用除外】


Point1 「耐火建築物等」とは、「耐火建築物」または「延焼防止建築物」をいう。「延焼防止建築物」とは、耐火建築物と同等以上の延焼防止性能(通常の火災による周囲への延焼を防止するために壁、柱、床その他の建築物の部分および防火戸その他の政令で定める防火設備に必要とされる性能)を有するものとして政令で定める建築物をいう。

準耐火建築物等」とは、「準耐火建築物」または「準延焼防止建築物」をいう。「準延焼防止建築物」とは、準耐火建築物と同等以上の延焼防止性能を有するものとして政令で定める建築物(耐火建築物等を除く)をいう。


Point2 隣地境界線から後退して壁面線の指定がある場合において、当該壁面線を越えない建築物で、特定行政庁が安全上、防火上および衛生上支障がないと認めて許可したものの建蔽率は、当該許可の範囲内において建蔽率の制限が緩和される。


(4) 建蔽率の制限が適用されない場合

 次のいずれかに該当する建築物には、建蔽率の制限は適用されない。つまり、建蔽率100%で建築物を建築することができるということである。

① 建蔽率の限度が10分の8とされている地域内で、かつ、防火地域内にある「耐火建築物等」
② 巡査派出所、公衆便所、公共用歩廊その他これらに類する建築物
③ 公園、広場、道路、川その他これらに類するものの内にある建築物で特定行政庁が安全上、防火上および衛生上支障がないと認めて許可したもの


(5) 敷地が建蔽率の制限の異なる2以上の地域にわたる場合

 たとえば、ひとつの敷地が、準住居地域と近隣商業地域にまたがり、建蔽率の最高限度が、それぞれ10分の6と10分の8であるような場合の問題である。

建築物の敷地が建蔽率の制限を受ける地域または区域の2以上にわたる場合においては、当該建築物の建蔽率は、各地域または区域内の建築物の建蔽率の限度にその敷地の当該地域または区域内にある各部分の面積の敷地面積に対する割合を乗じて得たものの合計以下でなければならない。

 このような計算方法を、加重平均という。


【敷地が2以上の地域にわたる場合の建蔽率】



容積率の制限

(1) 容積率

容積率とは、建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合をいう。

※ 延べ面積とは、建築物の各階の床面積の合計である。

 『容積率』とは、敷地においてどの程度の規模の建築物を建築できるかを数値で表したものである。例えば、100㎡の敷地に、延べ床面積250㎡の建物が建っていると容積率は100分の250で、250%という具合に計算する。

 容積率も、建蔽率と同様に、都市計画区域や準都市計画区域においては制限されることになる。それは、規模の大きな建築物があると、その建築物に出入りする人や物の多さに十分対応できるだけの道路や公園その他の公共施設が必要となるが、それに対応できない場所もあるからである。

 例えば、狭い道路しかない場所に容積率制限を設けず、どのような規模の建築物でも建ててよいことになると、火災などの災害が発生したときに問題が生じる。避難のために多くの人が狭い道路に殺到すれば、二次災害のおそれもあろう。そのため、容積率は、様々な公共施設との対応や、その建築物が所在する用途地域の性質などを考慮して都市計画の中で定められる。


(2) 容積率の制限

 都市計画区域および準都市計画区域内における容積率の最高限度は、次の通り(主なもの)。


(3) 前面道路の幅員による容積率制限

 容積率は前面道路(敷地が接続している道路)の渋滞防止も目的としているので、前面道路の幅員が狭い場合は規制がさらに厳しくなる。具体的には、前面道路の幅員が12m未満の場合は、以下のルールによって、容積率の制限が、都市計画で定められたものよりも厳しくなる場合がある。

前面道路(前面道路が2以上あるときは、その幅員の最大のもの)の幅員が12m未満である建築物の容積率は、当該前面道路の幅員のメートルの数値に、一定の数値(「法定乗数」)を乗じたもの以下でなければならない。

 つまり、都市計画で定められた容積率の数値と、上記の計算で得られた数値とを比較して、厳しいほうの数値が、その敷地の容積率の最高限度になるということである。

 法定乗数は地域により異なり、次の通り。










(4) 特定道路による前面道路幅員の緩和

 前面道路自体はそれほど広くなくても、その近くに広い道路(いわゆる「特定道路」)があれば、容積率の限度を算定するにあたって、前面道路幅員が緩和される。

建築物の敷地が、幅員15m以上の道路(「特定道路」)に接続する幅員6m以上12m未満の前面道路のうち当該特定道路からの延長が70m以内の部分において接する場合における当該敷地の容積率の限度の算定にあたっては、当該敷地の前面道路の幅員は、当該延長および前面道路の幅員をもとに一定の計算により算定した数値だけ広いものとみなす。   

 


(5) 延べ面積に含まれない建築物の部分

  建築物の床面積のうち一定の部分の床面積は、容積率を算定するにあたって、延べ面積に算入されない。算入されない部分で主なものは次の通り。


① 住宅または老人ホーム等の用途に供する地階の部分

建築物の地階でその天井が地盤面からの高さ1m以下にあるものの住宅または老人ホーム、福祉ホームその他これらに類するもの(以下「老人ホーム等」という)の用途に供する部分の床面積は、当該建築物のこれらの用途に供する部分の床面積の合計の3分の1を限度として、容積率の算定の基礎となる延べ面積に算入しない。


② 一定の昇降機の昇降路の部分・共同住宅の共用の廊下等の部分

政令で定める昇降機(エレベーター)の昇降路の部分または共同住宅もしくは老人ホーム等の共用の廊下もしくは階段の用に供する部分の床面積は、容積率の算定の基礎となる延べ面積に算入しない。

 ここでいう廊下、階段には、エレベーターホール、エントランスホールとして利用される部分や、階段の代わりとして設けられる車いす用の傾斜路も含まれる。


(6) 敷地が容積率の制限の異なる2以上の地域にわたる場合

 建蔽率と同じように、加重平均をした値になる。

建築物の敷地が容積率の制限を受ける地域、地区または区域の2以上にわたる場合においては、当該建築物の容積率は、各地域、地区または区域内の建築物の容積率の限度にその敷地の当該地域、地区または区域内にある各部分の面積の敷地面積に対する割合を乗じて得たものの合計以下でなければならない。


【敷地が2以上の地域にわたる場合の容積率】


(7) 容積率制限の緩和

 次の①②のいずれかに該当する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上および衛生上支障がないと認めて許可したものの容積率は、その許可の範囲内において、容積率の限度を超えるものとすることができる。

① 同一敷地内の建築物の機械室その他これに類する部分の床面積の合計の建築物の延べ面積に対する割合が著しく大きい場合におけるその敷地内の建築物
② その敷地の周囲に広い公園、広場、道路その他の空地を有する建築物


敷地面積の最低限度・外壁の後退距離

(1) 敷地面積の最低限度

 狭い敷地に建築物を建築させると、地震に弱いヒョロ長の建築物になりやすく、危険である。これを防止するために、用途地域に関する都市計画で、敷地面積の最低限度を定めることができる。例えば、最低限度を100㎡と定めれば、100㎡未満の敷地には建築物を建築できなくなり、地震に強い街並みを作りやすくなるということである。

建築物の敷地面積は、用途地域に関する都市計画において建築物の敷地面積の最低限度(200㎡を超えてはならない)が定められたときは、当該最低限度以上でなければならない。

 ただし、次の①~④のいずれかに該当する建築物の敷地については、敷地面積の最低限度の規制は適用されない。

① 建蔽率の限度が10分の8とされている地域内で、かつ、防火地域内にある耐火建築物等
② 公衆便所、巡査派出所等の建築物で公益上必要なもの
③ その敷地の周囲に広い公園、広場、道路その他の空地を有する建築物であって、特定行政庁が市街地の環境を害するおそれがないと認めて許可したもの
④ 特定行政庁が用途上または構造上やむを得ないと認めて許可したもの


(2) 第一種低層住居専用地域等内における外壁の後退距離

 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域および田園住居地域は、低層住宅に係る良好な環境を保護する地域であるため、建築物の建築について、特殊な制限がされる場合がある。その1つが外壁の後退距離の制限である。

第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域または田園住居地域内においては、建築物の外壁またはこれに代わる柱の面から敷地境界線までの距離(「外壁の後退距離」)は、当該地域に関する都市計画において外壁の後退距離の限度(1.5mまたは1m)が定められた場合においては、一定の場合を除き、当該限度以上でなければならない。


Point 外壁の後退距離の限度を定めることができるのは、第一種低層住居専用地域第二種低層住居専用地域または田園住居地域内に限られる。その他の用途地域には定めることができない。