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  • Sec.1

1医薬品販売に関する法令遵守

U222022/03/23 16:53

適正な販売広告

医薬品については、誇大広告等や承認前の医薬品等の広告が禁止されている。

まず、誇大広告等については、法第66条において「何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない」(同条第1項)とされ、「医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布する」ことはこれに該当するものとされている(同条第2項)。さらに、「何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない」とされている(同条第3項)。

また、承認前の医薬品については、法第68条において「何人も、第14条第1項又は第23条の2の5第1項若しくは第23条の2の23第1項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であって、まだ第14条第1項、第19条の2第1項、第23条の2の5第1項、第23条の2の17第1項、第23条の25第1項若しくは第23条の37第1項の規定による承認又は第23条の2の23第1項の規定による認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。」と規定され、未承認の医薬品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告が禁止されている。

これらの規定に違反して販売等を行った者については、「二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」(法第85条第4号又は第5号)こととされている。

法第66条及び第68条は、広告等の依頼主だけでなく、その広告等に関与するすべての人が対象となる。そのため、製薬企業等の依頼によりマスメディアを通じて行われる宣伝広告に関して、業界団体の自主基準のほか、広告媒体となるテレビ、ラジオ、新聞又は雑誌の関係団体においても、それぞれ自主的な広告審査等が行われている。

一般用医薬品の販売広告としては、製薬企業等の依頼によりマスメディアを通じて行われるもののほか、薬局、店舗販売業又は配置販売業において販売促進のため用いられるチラシやダイレクトメール(電子メールを含む)、POP広告等も含まれる。こうした一般用医薬品の販売広告に関しても、その内容や表現等が適切なものである必要があり、医薬品の販売等に従事する専門家にあっては、その広告活動に関しても、法令遵守はもとより、医薬品の販売広告に係るルールを十分理解し、その適正化に留意する必要がある。

なお、医薬品の広告に該当するか否かについては、(1) 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂(こう)進させる)意図が明確であること、(2) 特定の医薬品の商品名(販売名)が明らかにされていること、(3) 一般人が認知できる状態であることのいずれの要件も満たす場合には、広告に該当するものと判断されている。

 

【医薬品等適正広告基準】

医薬品等適正広告基準とは、平成29年9月29日付け薬生発0929第4号厚生労働省医薬・生活衛生局長通知(昭和55年通知は廃止)により、医薬品の販売広告に係る法令遵守、また、生命関連製品である医薬品の本質にかんがみて、広告の適正化を図ることを目的として示されたものである。この基準においては、購入者等に対して、医薬品について事実に反する認識を得させるおそれがある広告のほか、過度の消費や乱用を助長するおそれがある広告についても不適正なものとされている。

 

(a) 事実に反する認識を得させるおそれがある広告

一般用医薬品では、一般の生活者が医薬品を選択する際に販売広告が一つの判断要素となるので、広告の方法や内容、表現において、医薬品の効能効果や安全性等について事実に反する認識を生じさせることのないよう、また、その医薬品が適正に使用されるよう、正確な情報の伝達が重要である。

一般の生活者が事実に反する認識を得るおそれがある広告については、医薬品の販売元の製薬企業等が取得している承認の範囲を超える内容が表現されている場合、特にその効能効果について、承認された内容に合致しない表現がなされている場合が多い。漢方処方製剤等では、使用する人の体質等を限定した上で特定の症状等に対する改善を目的として、効能効果に一定の前提条件(いわゆる「しばり表現」)が付されていることが多いが、そうしたしばり表現を省いて広告することは原則として認められていない。なお、漢方処方製剤の効能効果は、配合されている個々の生薬成分が相互に作用しているため、それらの構成生薬の作用を個別に挙げて説明することも不適当である。

 

漢方薬のしばり表現

A漢方薬

効能・効果

体力中等度以上のものの次の諸症:....

 

B漢方薬

効能・効果

体力充実して、腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなものの

次の諸症:...

 

 

一般用医薬品と同じ有効成分を含有する医療用医薬品の効能効果をそのまま標榜することも、承認されている内容を正確に反映した広告といえない。一般用医薬品は、医療機関を受診するほどではない体調の不調や疾病の初期段階において使用されるものが多く、医師による診断・治療によらなければ一般に治癒が期待できない疾患(例えば、がん、糖尿病、心臓病等)について自己治療が可能であるかの広告表現は認められない。

医薬品の有効性又は安全性について、それが確実であることを保証するような表現がなされた広告は、明示的・暗示的を問わず、虚偽又は誇大な広告とみなされる。(法第66条第1項)

また、使用前・使用後に関わらず図画・写真等を掲げる際には、こうした効能効果等の保証表現となるものは認められない。このほか、医薬品の効能効果又は安全性について、最大級の表現又はこれに類する表現等を行うことも不適当とされている。

なお、チラシやパンフレット等の同一紙面に、医薬品と、食品、化粧品、雑貨類等の医薬品ではない製品を併せて掲載すること自体は問題ないが、医薬品でない製品について医薬品的な効能効果があるように見せかけ、一般の生活者に誤認を与えるおそれがある場合には、必要な承認等を受けていない医薬品の広告とみなされることがあり、その場合には法第68条の違反となる。

 

(b) 過度の消費や乱用を助長するおそれのある広告

医薬品は、何らかの保健衛生上のリスクを有し、人の生命や健康に影響を与える生命関連製品であるため、過度の消費や乱用が助長されることのないよう、また、生命関連製品としての信用や品位が損なわれることのないよう、その広告については節度ある適切な内容や表現が求められる。

販売広告に価格の表示や特定商品の名称と価格が特記表示されていることをもって直ちに不適当とみなされることはないが、例えば、商品名を連呼する音声広告や、生活者の不安を煽(あお)って購入を促す広告等、医薬品が不必要な人にまで使用を促したり、安易な使用を促すおそれがあるものについては、保健衛生上の観点から必要な監視指導が行われている。

また、「天然成分を使用しているので副作用がない」「いくら飲んでも副作用がない」といった事実に反する広告表現は、過度の消費や乱用を助長するおそれがあるだけでなく、虚偽誇大な広告にも該当する。

さらに、医薬関係者、医療機関、公的機関、団体等が、公認、推薦、選用等している旨の広告については、一般の生活者の当該医薬品に対する認識に与える影響が大きいことにかんがみて、仮に事実であったとしても、原則として不適当とされている。

なお、チラシやパンフレット等において、医薬品について食品的又は化粧品的な用法が強調されているような場合には、生活者に安易又は過度な医薬品の使用を促すおそれがある不適正な広告とみなされることがあるため注意が必要である。

適正な販売方法

薬局又は医薬品の販売業において、一般用医薬品の販売等が法令を遵守して適正に行われるためには、販売広告のほか、その許可の種類に応じた許可行為の範囲、一般用医薬品のリスク区分及びリスク区分に応じた情報提供並びに法定表示事項等へ留意した販売方法について、注意することが重要である。(規則第159条の14から第159条の17、構造設備規則第1条第1項第13号、構造設備規則第2条第12号)

 

【不適正な販売方法】

生活者に医薬品の過度の消費や乱用を助長するおそれがある販売方法については、販売広告と同様に、保健衛生上の観点から必要な監視指導が行われている。キャラクターグッズ等の景品類を提供して販売することに関しては、不当景品類及び不当表示防止法の限度内であれば認められているが、医薬品を懸賞や景品として授与することは、原則として認められていない。

購入者の利便性のため異なる複数の医薬品又は医薬品と他の物品を組み合わせて販売又は授与する場合には、組み合わせた医薬品について、購入者等に対して情報提供を十分に行える程度の範囲内であって、かつ、組み合わせることに合理性が認められるものでなければならない。したがって、効能効果が重複する組合せや、相互作用等により保健衛生上の危害を生じるおそれのある組合せは不適当である。なお、組み合わせた個々の医薬品等の外箱等に記載された法に基づく記載事項が、組み合わせ販売のため使用される容器の外から明瞭に見えるようになっている必要がある。(法第51条)

薬局及び店舗販売業において、許可を受けた薬局又は店舗以外の場所に医薬品を貯蔵又は陳列し、そこを拠点として販売等に供するような場合は店舗による販売等に当たらず、また、配置販売業において、医薬品を先用後利によらず現金売りを行うことは配置による販売行為に当たらない。これらの場合には、いずれも法第37条第1項の規定に違反するものとして取締りの対象となる。

なお、購入者がその購入した医薬品を業として他者に提供することが推定される場合において、購入者の求めるままに医薬品を販売すると、法第24条第1項の規定に違反する行為(医薬品の無許可販売)に便宜を与えることにつながるおそれがある。医薬品の販売等に従事する専門家においては、例えば、「医薬品を多量に購入する者」等に対しては、積極的に事情を尋ねるなど慎重に対処し、状況によっては販売を差し控えるべきである。

医薬品販売に関する法令遵守ー問題

【問18次の記述は、医薬品医療機器等法第66条第1項の条文である。(   )の中に入れるべき字句の正しい組合せはどれか。

 

何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、( a )、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は( b )な記事を広告し、記述し、又は( c )してはならない。

 

 

a

b

c

 

1

製造方法

誇大

流布

 

2

製造方法

曖昧

掲示

 

3

用法、用量

曖昧

掲示

 

4

用法、用量

誇大

流布

 

5

用法、用量

誇大

掲示

 

 

【問19医薬品の販売方法に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

 

a 配置販売業において、医薬品を先用後利によらず現金売りを行うことは配置による販売行為に当たらないため認められない。

b 医薬品を懸賞や景品として授与することは、サンプル品(試供品)を提供するような場合を除き、原則として認められない。

c 医薬品と一緒にキャラクターグッズ等の景品類を提供して販売することはいかなる場合でも認められない。

d 効能効果が重複するような医薬品を組み合わせて販売又は授与することは、購入者の利便性を高めるため推奨されている。

 

1(ab)

2(ac)

3(ad)

4(bc)

5(bd)

 

 

【問20医薬品医療機器等法に基づく店舗販売業者に対する行政庁の監視指導及び処分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。なお、本設問において、「都道府県知事」とは、「都道府県知事(その店舗の所在地が保健所設置市又は特別区の区域にある場合においては、市長又は区長)」とする。

 

a 都道府県知事は、店舗管理者に薬事に関する法令又はこれに基づく処分に違反する行為があったとき、又はその者が管理者として不適当であると認めるときは、その店舗販売業者に対して、店舗管理者の変更を命ずることができる。

b 都道府県知事は、薬事監視員に、当該店舗に立ち入りさせ、帳簿書類を収去させることができる。

c 当該店舗の薬剤師や登録販売者を含む従業員は、薬事監視員の質問に対して正当な理由なく答弁しなかった場合でも処罰されることはない。

d 都道府県知事は、店舗の構造設備によって不良医薬品を生じるおそれがある場合には、店舗販売業者に対して、その構造設備の改善を命ずることができる。

 

 

a

b

c

d

 

1

 

2

 

3

 

4

 

5