• 法令上の制限税その他ー2.建築基準法
  • 5.建築物の用途制限 (集団規定-2)
  • 建築物の用途制限 (集団規定-2)
  • Sec.1

1建築物の用途制限 (集団規定-2)

堀川 寿和2021/11/25 11:05

 Chapter.1 都市計画法で「用途地域」を学習した。そこでは、土地の使い道(用途)を区分することによって、より住みやすい都市を造ろうとするのだと理解した。建築基準法は、それを具体的に、どの用途地域にはどのような建物が建てられるのか、建てられないのかを定めている。

用途地域内における建築物の用途制限

13種類の用途地域ごとに、建築物の用途が制限される。まず、規制内容を大まかに把握しよう。


(1) 住居系の用途地域

① 第一種低層住居専用地域

 低層住宅にかかる良好な住居の環境を保護するため定める地域である。

13種類の用途地域の中で、最も厳しい規制がかかる地域のひとつである。どの用途地域でも建築可能なもの(神社、教会・寺院、公衆浴場、保育所など)の他、幼稚園、小中高校、図書館などが建築できる。

その一方、もともと低層住宅のための専用地域なので、低層住宅以外では、上記を除いて、小規模な店舗等であっても建築できない。


② 第二種低層住居専用地域

 主として、低層住宅にかかる良好な住居の環境を保護するため定める地域である。ここでは、第一種低層住居専用地域で建築できるものに加えて、小規模な店舗などが建築できるようになる。


③ 田園住居地域

 農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域である。ここでは、低層住居専用地域内に建築することができる建築物に加えて、農業用施設を建築することができる。建築できる農業用施設は、農産物の生産・集荷・処理・貯蔵に供する建築物、農業の生産資材の貯蔵に供する建築物(農機具収納施設等)、農業の利便を増進するために必要な店舗・飲食店等の建築物(農産物直売所や農家レストランなど)で床面積が500㎡以内のものである。


④ 第一種中高層住居専用地域

 中高層住宅にかかる良好な住居の環境を保護するため定める地域である。ここでは、第2種低層住居専用地域で建築できるものに加えて、大学、病院、小規模な飲食店、店舗などが建築できる。


⑤ 第二種中高層住居専用地域

 主として、中高層住宅にかかる良好な住居の環境を保護するため定める地域である。ここでは、第一種中高層住居専用地域で建築できるものに加えて、店舗、飲食店、事務所などが建築できる。


⑥ 第一種住居地域

 住居の環境を保護するため定める地域である。ここでは、第2種中高層住居専用地域で建築できるものに加えて、自動車教習所、ボーリング場、旅館、ホテルなどの一定規模以下のものが建築できる。


⑦ 第二種住居地域

 主として、住居の環境を保護するため定める地域である。ここでは、第1種住居地域で建築できるものに加えて、カラオケボックス、マージャン店、パチンコ店などが建築できる。


⑧ 準住居地域

 道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するため定める地域である。ここでは、第2種住居地域で建築できるものに加えて、営業用倉庫、大規模な自動車車庫などが建築できる。


(2) 商業系の用途地域

① 近隣商業地域

 近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進するため定める地域である。ここで建築できないのは、ダンスホール、キャバレー、個室付浴場(いわゆるソープランド)、特定の危険性の高い工場などで、それ以外はほとんど全ての用途の建物が建築できると考えてよい。


② 商業地域

 主として、商業その他の業務の利便を増進するため定める地域である。

13種類の用途地域の中で、最も規制が緩い地域といえる。特定の危険性の高い工場などを除き、ほとんど全ての用途の建物が建築できる。


(3) 工業系の用途地域

① 準工業地域

 主として、環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進するため定める地域である。

商業地域に次いで規制の緩い地域であり、個室付浴場と特定の危険性の高い工場などを除き、ほとんど全ての用途の建物が建築できる。


② 工業地域

 主として、工業の利便を増進するため定める地域である。ここでは、幼稚園、小中高校、大学、病院、ホテル、旅館、劇場、映画館、演芸場、個室付浴場などが建築できない。


③ 工業専用地域

 13種類の用途地域の中で、最も厳しい規制がかかる地域のひとつである。

ここでは、どの用途地域でも建築可能なもの(神社、教会・寺院、公衆浴場、保育所など)の他、各種工場、自動車車庫、自動車教習所などが建築できる。


【用途地域内における建築物の用途制限】


○=原則として建築できる

×=原則として建築できない

①=日用品の販売を主たる目的とする店舗、食堂・喫茶店、理髪店・美容院等のサービス業を営む店舗等で、その用途に供する部分が2階以下である場合に限り建築することができる

②=農業の利便を増進するために必要な一定の店舗・飲食店等(田園居住地域・その周辺の地域で生産された農産物の販売を主たる目的とする店舗、その農産物を材料とする料理の提供を主たる目的とする飲食店、その農産物を原材料とする食品の製造または加工を主たる目的として自家販売のために食品製造業を営むパン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋等で一定のもの)に限り建築することができる

③=物品販売業を営む店舗・飲食店、理髪店・美容院等のサービス業を営む店舗等で、その用途に供する部分が2階以下である場合に限り建築することができる

④=物品販売業を営む店舗・飲食店は建築することができない

⑤=その用途に供する部分が2階以下である場合に限り建築することができる

⑥=その用途に供する部分が3,000㎡以下の場合に限り建築することができる

⑦=その用途に供する部分が10,000㎡以下の場合に限り建築することができる

⑧=都市計画区域内においては、都市計画によりその敷地の位置が決定されていなければ、新築・増築することができない

【表の語句の説明】

・ 「診療所」とは、入院ベッド数19以下、または入院設備のない医療施設のこと。

・ 「病院」とは、入院ベッド数20以上の医療施設のこと。

・ 「料理店」とは、単なるレストランや飲食店ではなく、芸者さんを呼べるような所(いわゆる風俗店の一種)。


Point1 特定行政庁が許可した場合は、制限されている用途の建築物であっても建築することができる


Point2 建築物の敷地が異なる用途地域にわたる場合は、その敷地の全部について、敷地の過半の属する用途地域の制限が適用される。たとえば、建築物の敷地が工業地域と工業専用地域にわたる場合において、その敷地の過半が工業地域内にあれば、その敷地に、工業地域内に建築することができる建築物を建築することができる。


用途地域の指定のない区域内における建築物の用途制限

 用途地域の指定のない区域(市街化調整区域を除く)内においては、次の建築物を建築することができない。

次の①または②に該当する建築物で、その用途に供する部分(劇場、映画館、演芸場または観覧場にあっては、客席の部分)の床面積の合計が10,000㎡を超えるもの
① 劇場、映画館、演芸場もしくは観覧場、ナイトクラブ等一定のもの
② 店舗、飲食店、展示場、遊技場、勝馬投票券発売所、場外車券売場等一定のもの

 ただし、特定行政庁が当該区域における適正かつ合理的な土地利用および環境の保全を図る上で支障がないと認め、または公益上やむを得ないと認めて許可した場合には、建築することができる。

卸売市場等の用途に供する特殊建築物の位置


都市計画区域内においては、卸売市場、火葬場またはと畜場、汚物処理場、ごみ焼却場その他政令で定める処理施設の用途に供する建築物は、一定の場合を除き、都市計画においてその敷地の位置が決定しているものでなければ、新築し、または増築することができない。

 なお、これらの建築物は、第一種低層住居専用地域、第ニ種低層住居専用地域、田園住居地域および第一種中高層住居専用地域では、建築することができない。


Point 学校卸売市場等の用途に供する特殊建築物ではないので、都市計画による敷地の位置の決定がなくとも新築または増築することができる。