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1人体の組織及び機能

N222022/03/22 16:41

循環器系

 

(1) 心臓の構造

 心臓は、左心房・左心室・右心房・右心室の4つから成り立っており、左心房には肺静脈、左心室には大動脈、右心房には大静脈、右心室には肺動脈がつながっている。

酸素を多く含んだ血液を動脈血という。逆に酸素が少なく二酸化炭素を多く含んだ血液は静脈血という。

 

心臓の大きさは握りこぶし大(200g~300g)、心拍数は6080/分とされる。

覚え方として、「心臓に戻ってくるときにはお静かに(静脈)」というのがある。

 

 

(2) 心筋

 心臓は心筋という筋肉からできている。筋肉の分類であるが下記の通り。(■2 筋肉を参照)

 

「筋肉の分類」

筋肉

活動内容

横紋筋(骨格筋)

自由に動かせる随意筋でできている。

平滑筋(内臓筋)

自由に動かせない不随意筋でできている。

心筋は内臓筋でありながら、平滑筋ではなく横紋筋であっても自由に動かせない不随意筋であるという特色がある。

心臓は心筋の自律的な収縮と拡張運動によって拍動している。

 

 

(3) 冠状動脈

心臓は血液を全身に送り出しているが、心臓自体は冠状動脈という血管から酸素や栄養素の供給を受けている。

 

 

(4) 肺循環と体循環

 心臓から出た血液が体内を循環する道筋として、肺循環と体循環の2つがある。

 

「肺循環と体循環」

血液循環

活動内容

肺循環

右心室から肺動脈を経て、肺の毛細血管に入り、肺静脈を通って左心房に戻る。

この循環で肺に二酸化炭素を排出して、酸素を取り入れている。

体循環

左心室から大動脈に入り、肺を除いた各組織の毛細血管を通して右心房に戻ってくる。この循環で全身の各組織に酸素を供給して、二酸化炭素を受け取っている。

肺循環では、肺静脈に動脈血が流れて、肺動脈に静脈血が流れている。

「心臓の血管の流れ」の問題は、図を使用してよく出題されている。様々なイラストを確認しながら過去問を解いておくこと。

 

 

 

 

筋肉

(1) 筋肉の種類

 筋肉には以下の種類がある。

 

筋肉

横紋筋

骨格筋

随意筋

心筋

不随意筋

平滑筋

内臓筋

 

筋肉の種類

詳細

横紋筋

明暗のしま模様のある筋肉で体の大部分をしめている。骨格に広く分布している。

平滑筋

消化器や泌尿器、血管などの壁になっている筋肉であり、内臓筋ともいう。

随意筋

自らの意思によって動かせる筋肉であり、体性神経に支配されている。

不随意筋

自らの意思によって動かせない筋肉であり、自律神経によって支配されている。

骨格筋

骨格や関節を動かして、全身の運動をつくりだすための筋肉であり、体性神経によって支配される横紋筋であり、随意筋でもある。

心筋

心臓の各部屋の壁を作っている筋肉であり、心臓だけに存在している。

横紋筋は随意筋なのだが、心筋だけは不随意筋である特殊な筋肉である。

筋肉の組織は筋繊維である筋細胞が主体となっている。

 

 

(2) 収縮筋のエネルギー

筋肉を収縮させるときに必要なエネルギーは、筋肉内に蓄えたグリコーゲンを分解してできるATPによって作られる。

 

 

(3) ATPと筋収縮

ATPとは「アデノシン3リン酸」というリン酸化合物の略である。エネルギーはATPの加水分解によってまかなわれており、この分解反応は酸素を使わない無酸素運動でもある。グリコーゲンを分解する場合には乳酸物質が生成されているが、これは筋肉の収縮を阻害する疲労物質でもある。つまり酸素が十分なときは水と二酸化炭素に分解され、酸素が不十分なときには乳酸が蓄積される。

 

 

(4) 筋肉の太さ

 筋肉が引き上げられる物体の重さは筋肉の太さに比例する。

 

 

(5) 筋肉の収縮様式

 筋肉の収縮様式には、等尺性収縮と等張性収縮がある。

 

筋肉の収縮様式

等尺性収縮

筋肉の長さは変わらないが、外力に抵抗して筋力の発生がある状態

等張性収縮

筋収縮時に筋肉の長さが変わるもので、筋肉が短くなる場合と、長くなる場合がある。

 

 

(6) 筋肉の動作の関係

 筋肉の収縮と動作の関係をあらわすと以下のようになる。

 

「筋肉の動作」

動作の関係

詳細

一番大きな力を出す時

収縮しようとする瞬間

仕事量が一番大きいもの

負荷が適当なときに

引き上げることのできる高さ

筋肉の長さに比例する

仕事の作業効率が大きいもの

縮む速さが適当なときに

収縮力が大きいもの

筋の太さが太いときに、運動で筋肉が太くなり、筋肉の活動性肥大が行われる。

 

 

【アウトプット】次の記述の正誤を答えよ。

1. 循環は、左心室から大動脈に入り、毛細血管を経て静脈血となり右心房に戻ってくる血液の循環である。

2. 心臓の拍動は、自律神経の支配を受けている。

3. グリコーゲン分解に必要な酸素が十分な場合には、乳酸は蓄積されない。

4. 鉄棒などにぶら下がった状態のことを等張性収縮という。

5. 代謝において、体内に摂取された栄養素が、種々の化学反応によって、ATPに蓄えられたエネルギーを用いて、細胞を構成する蛋白質などの生体に必要な物質に合成されることを異化という。

 

 

呼吸器系

(1) 呼吸器官

呼吸をするために発達した器官を呼吸器官という。人の場合は鼻腔(びくう)と口から気管、気管支、肺へとつながっている。

気管は、軟骨でできている管で、枝分かれして気管支となっている。

気管支はさらに細かく枝分かれして、肺胞という無数の小さな袋がついている。

肺胞は薄い膜でできており、周りを毛細血管が取り巻いている。

 

 

(2) ガス交換

肺胞と毛細血管とで、酸素と二酸化炭素のガス交換を行っている。肺胞内の空気から酸素が取り入れられ、血液から肺胞内に二酸化炭素が排出されている。

 

 

(3) 外呼吸と内呼吸

 呼吸の種類には以下の2種類がある。

 

呼吸の種類

呼吸活動

外(がい)呼吸

肺呼吸とも呼び、体外から酸素を取り入れて二酸化炭素を排出するガス交換の働きをしている。

内(ない)呼吸

細胞呼吸とも呼び、全身組織を構成する細胞と血液のあいだで、組織液を通してガス交換を行っている。

 

 

(4) 呼吸運動

肺には筋肉がなく、主として肋間筋(ろっかんきん)と横隔膜の協調運動によって肺腔内容積を周期的に増減させて、呼吸運動を行っている。

 

横隔膜が下がる。

    ↓

胸郭内容積が増す

    ↓

内圧が下がる

    ↓

肺に空気が流入する(吸気

 

成人の呼吸数1分間に1620回だが、食事・入浴・発熱によって増加する。

安静時に1回の呼吸で出入りする空気量を1回換気量といい、成人男子で約500mlある。

肺内へ流れ込む空気を吸気という。吸気は肋間筋と横隔膜などの筋肉の働きによって流れ込むが、この筋肉を呼吸筋という。

肺から気道を経て体外に吐き出される空気を呼気という。

外呼吸によって血液中に取り込まれた酸素は赤血球中のヘモグロビンと結合して全身の組織へと運ばれる。

細胞は酸素を利用して栄養分であるブドウ糖を分解し、エネルギーを取り出している。この際に不要な二酸化炭素ができる。

 

 

(5) 呼吸中枢

呼吸に関与している筋肉は、延髄にある呼吸中枢によって支配されている。呼吸中枢がその活動を維持するためには一定量以上の二酸化炭素が血液中に含まれている必要がある。

 血液中の二酸化炭素が増加すると、呼吸中枢が刺激されて肺でのガス交換量が多くなり、呼吸が速く、深くなる。

 身体活動時には血液中の二酸化炭素分圧の上昇などによって、呼吸中枢が刺激され、1回換気量や呼吸数が増加する。