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1労働安全衛生法

N222022/03/22 15:40

労働安全衛生法

 「労働安全衛生法」は、元々労働基準法の一部であった安全衛生の分野を独立させて、昭和47年に制定された法律である。安全衛生分野を担う本法は本則だけで123条まであり、関連法規も数多いのが特色となっている。

 

総則

(1) 目的条文

【条文チェック】(1条)

 労働安全衛生法は、労働基準法と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等、その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。

覚え方として、「危・責・自・安・快」→「キ・セ・ジ・ア・カ

 

 

(2) 労働災害の定義

労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することをいう。

 

 

安全衛生管理体制

 

 

(1) 総括安全衛生管理者

【条文チェック】(10条)

事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。

労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。

労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。

健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。

労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。

⑤ 労働災害を防止するため必要な業務で、厚生労働省令で定めるもの。

 

「総括安全衛生管理者を選任すべき事業場」

常時労働者数

業種

100人以上

林業・鉱業・建設業・運送業・清掃業

300人以上

電気・ガス・水道・通信・製造・自動車整備業等・ゴルフ場・旅館・卸売

1,000人以上

その他の業種

100人以上は、「林・鉱・建・運・清」→「リン・コウ・ケン・ウン・セイ」と暗記する。

1003001,000には、「イザセンニン」というゴロがある。

・ 選任時期は、選任すべき事由が生じた日から14日以内に選任して、遅滞なく所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。

・ 総括安全衛生管理者が旅行や疾病、事故その他の事由によって職務を行えないときには代理者を選任する必要がある。

都道府県労働局長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、総括安全衛生管理者の業務の執行について事業者に勧告することができる。

 

 

 

(2) 衛生管理者

衛生管理者は、総括安全衛生管理者が統括管理する業務のうち、衛生に係る技術的事項を管理することとされている。

 

「衛生管理者を選任すべき事業場」

事業場の常時労働者数

衛生管理者の数

10人以上~50人未満

安全衛生推進者または衛生推進者を選任

50人以上200人以下

1人以上

200人超~500人以下

2人以上

500人超~1,000人以下

3人以上

1,000人超~2,000人以下

4人以上

2,000人超~3,000人以下

5人以上

3,000人超

6人以上

 

事業者は、すべての業種において、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに、事業場の規模に応じて、衛生管理者を選任しなければならない。

事業場の労働者数を覚えるゴロとして、「200500100020003000」を、「ニゴジュウ・ニジュウ・サンジュウ」というのがある。

衛生管理者は少なくとも毎週1作業場等を巡視し、設備、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。このために事業者は衛生管理者に衛生に関する措置をなし得る権限を与えなければならない。(ゴロとして、「周囲を週1(シュウイ)巡視する」と覚えておく)。

衛生管理者は、事業場に専属の者を選任しなければならない。ただし2人以上の衛生管理者を選任する場合において、当該衛生管理者の中に労働衛生コンサルタントがいるときは、当該労働衛生コンサルタントのうち1については、事業場に専属の者でなくてもよい。

次の事業場では、衛生管理者のうち少なくとも1人を専任の衛生管理者としなければならない。

常時1,000を超える労働者を使用する事業場

常時500を超える労働者を使用し、かつ、一定の有害業務に常時30以上の労働者を従事させる事業場

(有害業務とは、労働基準法第36条に規定される、1日につき2時間を超えて時間外労働をさせることができない坑内労働その他健康上特に有害な業務をいう。ただし、衛生管理者の専任にあたっては、「深夜業を含む業務」は含まれない。)

②においては、一定の業務に労働者を従事させる事業場においては、衛生管理者のうち1人は衛生工学衛生管理者免許を受けた者から選任させなければならない。

衛生管理者は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任して、遅滞なく所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

 

【用語の理解】

 以下、その責任者が「専属」か「専任」であるかを問われることが多い。

専属

通常の勤務時間を一の事業場だけに勤務して、他の場所には勤務していない者

専任

通常の勤務時間をもっぱらその業務だけに費やすことで、その仕事しかしない者

 

第一種衛生管理者

すべての業種で選任可能

第二種衛生管理者

金融・保険・卸売り・スーパー等、危険でない業種で選任可能

衛生工学衛生管理者

「専任」の有害業務の場合に1名の選任が必要

 

 

(3) 衛生推進者

常時10人以上、50人未満の労働者を使用する小規模事業場において衛生推進者を選任しなければならない。また屋外産業・屋内産業的業種の場合には安全衛生推進者を選任する。

それぞれ選任時期は、選任すべき事由が生じた日から14日以内に選任しなければならないが、所轄労働基準監督署長への報告義務はない。

 

 

(4) 産業医

産業医業種を問わず、常時50人以上の労働者を使用する事業場にて1名を選任しなければならない。ただし常時3,000人を超える労働者を使用する事業場では2名以上の産業医を選任する必要がある。

 

「産業医の職務(医学に関する専門的知識を必要とするもの)」

健康診断や面接指導等の実施

それらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置

作業環境の維持管理

 

作業の管理

 

労働者の健康管理

 

健康教育、健康相談

その他労働者の健康の保持増進を図るための措置

衛生教育

 

労働者の健康障害の調査

原因調査と再発防止のための措置

主な職務には「安全衛生に関する方針の表明」は含まれていない。

専任とは違って専属要件の場合もあり、次の事業場においてはその事業場に専属の者を産業医として選任しなければならない。

常時1,000人以上の労働者を使用する事業場

一定の有害業務に、常時500人以上の労働者を従事させる事業場

(この有害業務には、衛生管理者の有害業務の他に深夜業務、および病原体を扱う業務が含まれている。)

産業医は少なくとも毎月1作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。なお、作業場等の巡視については、産業医が事業者から毎月1回以上、所定の情報が提供されており、事業者の同意を得ているときは、少なくとも2ヶ月に1回行えば足りるとされている。

(衛生管理者が週1回の巡視義務があるのに対して、産業医が月1回と少ないのは、衛生管理者がその事業場に勤務しているのに対して、産業医が勤務しているのが近隣の病院であり、滅多に事業場に来られないことを考えると理解できる。)

産業医は労働者の健康を確保するため必要があると認めるときには、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。事業者は、当該勧告を受けたときは、これを尊重しなければならない。また自己の職務に関する事項について、総括安全衛生管理者に対して勧告し、又は衛生管理者に対して指導し、若しくは助言することができる。

産業医を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任して、遅滞なく所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

 

【アウトプット】 次の記述の正誤を答えよ。

1. 常時800人の労働者を使用する製造業の事業場における衛生管理体制では、衛生管理者を三人以上選ばなければならない。

2. 常時使用労働者数が500人を超える事業場で「鉛、クロム及び一酸化炭素の粉じん又はガスを発散する場所における業務」に従事する労働者数が30人以上の場合は、衛生管理者のうち1名は衛生工学衛生管理理者を選任しなければならない。

3. 「多量の高熱物体を取り扱う業務」「深夜業」等の有害業務を取り扱う常時使用労働者数が300人を超える事業場では、専属の産業医を選任しなければならない

4. 総括安全衛生管理者に管理させるべき業務として、安全衛生に関する方針の表明に関することがある。

5. 産業医は、選任すべき事由が発生した日から30日以内に選任しなければならない。