- 憲法ー14.地方自治
- 1.地方自治の意義
- 地方自治の意義
- Sec.1
1地方自治の意義
憲法が特に一章を設けて地方自治を保障した意義は、憲法の基調とする政治民主化の一環として、住民の日常生活に密接な関連をもつ公共的事務は、その地方の住民の手でその住民の団体が主体となって処理する政治形態を保障することにある(最判S38.3.27)。
■地方自治保障の性質
憲法の保障する地方自治がどのような性質を有するのかについては、次のとおり争いがある。
(1) 固有権説
個人が国家に対して固有かつ不可侵の権利をもつのと同様に、地方公共団体もまた固有の基本権を有するとする説。これによれば、地方公共団体固有の基本権は、憲法改正によっても奪うことはできない。
[批判]
1. 個人の人権と地方公共団体の自治権を同視することには問題がある。
2. 地方公共団体に固有の自治権といっても、その内容が不明確である。
(2) 伝来説(承認説)
地方自治は、国家の主権ないし統治権から伝来したもので、国の承認ないし委任に基づいて認められるとする説。これによれば、地方自治の本旨に特別な法的意味は認められず、地方自治保障の範囲は法律により定められ、法律によればその廃止も可能である。
[批判]
憲法が明文で地方自治の保障をした意味がなくなってしまう。
(3) 制度的保障説(通説)
地方自治の保障とは、地方自治という歴史的・伝統的・理念的な公法上の制度を保障することであるとする説。これによれば、地方自治の本旨とは、国の法律をもってしても侵すことのできない地方自治制度の本質的内容ないし核心部分を意味する。
[批判]
1. 地方自治制度の本質的内容ないし核心部分といっても、その内容が不明確である。
2. 本質的内容ないし核心部分ではないとされる部分については、国による制約を許すことになりかねない。