• 憲法ー13.財政
  • 2.財政に関する国会の権限
  • 財政に関する国会の権限
  • Sec.1

1財政に関する国会の権限

堀川 寿和2022/03/14 15:52

 国会が財政を監督する方法は、次のとおりである。

予算

 「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない」(86条)。「予算を作成して国会に提出する」のは内閣の事務に属する(735号)。

 

 予算の性質については、国会の予算修正権の範囲とも関連して、争いがある。

(1) 予算法律説

 予算は、法律それ自体であるとする説。予算を法律と解して、国会の民主的統制下におくことが財政国会中心主義の趣旨に合致することなどを根拠とする。

 

(2) 予算法形式説(通説)

 予算は、法律とは異なった国法の一形式であるとする説。財政国会中心主義の原則からは、予算を純然たる行政行為と解するのは妥当でなく、国の財政行為の準則として法的性格を認めるべきであるが、その一方で、予算は、一般国民の行為を一般的に規律しないこと、成立手続が異なることなどから法律それ自体と解することも妥当ではないことを根拠とする。

 

(3) 予算行政説

 予算は、行政措置の一種であり、政府の議会に対する意思表示にすぎないとして、予算に法的性格を認めない説。元来、財政処理権能を有するのが政府であることなどを根拠とする。

国会の予算修正権

 予算の修正には、減額修正、増額修正ともに、その範囲について争いがある。

 

(1) 減額修正

① 無制限説(通説)

 国会の予算修正権は無制限であるとする説。財政国会中心主義の原則が確立されていること、議会の予算修正権限を制約する規定(旧憲法67)が存在しないこと等を根拠とする。

 

② 制限説

 国会の予算修正権を認めない説。国会は歳出の根拠となる法律を制定した以上、それに拘束されるべきであることなどを根拠とする。

 

(2) 増額修正

① 否定説

 予算行政説を前提に、増額修正権を否定する見解。この見解によれば、予算は国法ではないため、国会には予算についての発案権がないと解される。よって、その修正権も当然限定され、政府提出の原案よりも支出金額を増加し、又は新たなる款項を追加する修正はできないとされる。

 

② 肯定説

(a) 制限説

 予算法形式説を前提に、増額修正を可能とする説。これによっても、内閣に専属する予算提案権を侵害するような全面的修正や、予算の同一性を損なうような大修正は許されない。

(b) 無制限説

 予算法律説ないし予算法形式説を前提に、増額修正を可能とする説。予算法律説からは当然に、また、予算法形式説からは、国会の予算議決権を制限する規定が憲法上存在しないことや、憲法は財政国会中心主義を採用していることなどから、国会の増額修正権に制限はないといわれる。

予備費とその支出

 「予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる」(871項)。「内閣は、予備費として相当と認める金額を、歳入歳出予算に計上することができる」のである(財政法24条)。

 また、「すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない」(872項)。もっとも、承諾が得られない場合でも、既に行われた支出の法的効果に影響はなく、内閣に政治的責任が生ずるのみである。