- 憲法ー10.国会
- 7.衆議院と参議院の関係
- 衆議院と参議院の関係
- Sec.1
1衆議院と参議院の関係
衆議院にのみ特別の権能が与えられたり、衆議院の議決が参議院の議決に優越したりする場合があり、両議院は対等の関係にはない。衆議院議員の任期が参議院議員の任期よりも短いこと(45条)、衆議院にのみ解散制度があること(7条、69条)から、参議院と比べて衆議院が国民の意思をより直接に反映しやすいことなどがその理由である。
■衆議院にのみ認められる権能
(1) 内閣不信任決議権
衆議院で内閣不信任案が可決され、または、信任案が否決されたときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、内閣は総辞職しなければならない(69条)。
(2) 予算先議権
予算(案)は、先に衆議院に提出しなければならない(60条1項)。
■衆議院の議決が参議院の議決に優越する場合
(1) 法律案の議決
衆議院で可決した法律案が、参議院で否決または修正された場合、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決したときは、法律となる(59条2項)。また、参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて60日以内に議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる(59条4項)。
(2) 予算案の議決、条約の承認、内閣総理大臣の指名
参議院が衆議院と異なった議決をした場合、両院協議会を開催しなければならない(60条2項、61条、67条2項)。両院協議会は、各議院において選挙された各々10人の委員で組織される(国会法89条)。傍聴は許されず、非公開である(国会法97条)。両院協議会においても意見が一致しないとき、または、国会休会中の期間を除いて、予算案の議決、条約の承認については30日以内(60条2項、61条)、内閣総理大臣の指名については10日以内(67条2項)に参議院が議決しないときは、衆議院の議決がそのまま国会の議決となる。
なお、法律案を衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした場合、両院協議会が設置されることがあるが、この両院協議会の設置は任意的である(59条2項)。
■議院自律権
(1) 各議院の組織に関する自律権
① 会期前に逮捕された議員の釈放要求権、会期中の議員逮捕の許諾権
議院は、国会の開催にあたって、会期前に逮捕された議員を会期中釈放するよう要求できる(50条)。また、会期中の議員逮捕の許諾権は、「各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない」(国会法33条)という不逮捕特権を有することに対応したものである。
② 議員の資格争訟の裁判権
「両議院は、各々議員の資格に対する争訟を裁判する」(55条)。
③ 役員選任権
「両議院は、各々議長その他の役員を選任する」(58条1項)。
(2) 各議院の運営に関する自律権
① 議院規則制定権
両議院は、各々会議その他の手続および内部の規律に関する規則を定めることができる(58条2項)。国会中心立法の原則の例外である。
② 議員懲罰権
両議院は、各々院内の秩序を乱した議員を懲罰することができる(58条2項)。議員に対する懲罰は、刑罰とは性質が異なり、院内の秩序を乱した議員に対して、組織体としての秩序を維持し、その機能を円滑にするために科す懲戒罰であるため、裁判所の裁判による必要はなく、各議院が自律的に科すことができる。