- 憲法ー8.国務請求権(受益権)
- 2.請願権
- 請願権
- Sec.1
1請願権
■請願権の沿革と現代的意義
(1) 沿革
請願権は、歴史的には、近代的な議会制度が成立する以前の絶対君主制の時代に、民意を為政者に伝える手段として用いられた請願に由来する。かつては、国民が政治的意思を表明するための有力な手段であった。
(2) 現代的意義
現代では、国民は選挙権を有し、政党などを通じてその意思を国政に反映させることができ、また、表現の自由の保障の下に国政を批判することができる。その他、行政不服審査や裁判制度といった権利・利益の救済の途が開かれており、請願権の意義は相対的に減少している。
しかし、今日の代議制においても、民意の反映が不十分であったり、閉塞状態が生じたりすることがあるので、国民の多元的な意思や要望を直接に議会や行政機関に伝える手段として、請願権は参政権的な役割を果たしているといえる。また、請願権は権利の性質上外国人にも保障されるので、参政権を有しない外国人にとっては、重要な機能を果たす。
■請願権の内容
(1) 『請願』の意味
『請願』とは、国または地方公共団体の機関に対して、その職務権限に属するあらゆる事項について希望を述べることである。請願権は、単に希望を述べ、その希望の受理を要求できるだけであって、請願を受けた機関に、請願内容に応じた措置をとる法的義務を負わせるものではない。事後処理をどうするかは、各機関の裁量に委ねられている。もっとも、請願を受けた機関は、それを誠実に処理しなければならない(請願法5条)。
cf. 天皇に対する請願も認められる(請願法3条)。天皇に対する請願は内閣に対して行う(同法同条)。
(2) 「その他の事項に関し」の意味
自己と無関係な事項でもよい。また、憲法改正についての請願も認められる。
cf. 請願の内容は「損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正」に限定されない。16条の規定は例示的列挙である。
(3) 『何人も』の意味
請願は『何人も』できる(請願法6)。法人その他の任意団体、未成年者、外国人にも認められる。
(4) 『平穏に』の意味
請願は『平穏に』なされなければならない。暴力や威嚇を使ってはならない。
(5) 請願権行使の手続
請願権の行使に際しては、請願法(2、3、5条)、国会法(79~82条)、衆議院規則(171~180条)、参議院規則(162~172条)、地方自治法(24・125条)の定める手続に従うことを必要とする。これらの手続によらない希望の陳述を拒んでも、違憲・違法ではない。