• 法令上の制限税その他ー1.都市計画法
  • 4.開発許可制度
  • 開発許可制度
  • Sec.1

1開発許可制度

堀川 寿和2021/11/24 15:40

 『開発許可』とは、無秩序な市街化(スプロール)を防止するための制度である。

 昭和30年代の高度経済成長は、都市への人口集中を促し、結果、俗悪な環境の市街地を生み出すのに一役買ってしまった。このようにいったん俗悪な市街地を形成してしまった場合、それを良好な市街地につくりなおすことは容易ではない。立ち退きの時間もかかるし、いったん建てた建物も取り壊さなければならない。そこで、そのような俗悪な市街地が形成される前、すなわち、土地の造成工事の段階で規制を加えようとするのが開発許可制度である。


開発行為の許可(開発許可)

(1) 開発許可

 開発許可とは、開発行為をしようとする場合に必要になる都道府県知事等の許可である。

開発行為をしようとする者は、あらかじめ、都道府県知事(指定都市または中核市の区域内にあっては、当該指定都市等の長)の許可を受けなければならない。


(2) 開発行為

 開発行為をしようとするときに開発許可が必要になるので、まず、開発許可の前提である「開発行為」とは何かが問題となる。

開発行為とは、主として建築物の建築または特定工作物の建設の用に供する目的で行なう土地の区画形質の変更をいう。

  建築物の建築とは、建築物を新築し、増築し、改築し、または移転することである。

 特定工作物とは、次のものをいう。

第一種特定工作物① コンクリートプラント
② アスファルトプラント
③ クラッシャープラント
④ 危険物の貯蔵または処理に供する工作物
第二種特定工作物① ゴルフコース
② 1ha以上の野球場、庭球場、陸上競技場、遊園地、動物園その他の運動・レジャー施設である工作物
③ 1ha以上の墓園

※ 1ha=10,000㎡


Point1 特定工作物で面積要件(1ha以上)があるのは、第二種特定工作物の運動・レジャー施設と墓園だけである。


Point2 「土地の区画形質の変更」とは、造成工事のことをいう。単に登記簿上の地目の変更だけで、造成工事を伴わない場合は「土地の区画形質の変更」にあたらない。


Point3 開発行為の定義に該当しない場合は、たとえ土地の区画形質変更を行うのであっても、開発許可は不要である


開発許可が不要となる場合

 開発行為の定義に該当する行為であっても、一定の場合に、開発許可が不要となる。

 開発行為であれば、すべて都道府県知事の許可が必要というのでは過大な負担となる。そこで、一般的に乱開発のおそれがないような場合を例外とした。


(1) 公益上必要な建築物を建築するための開発行為

 公益上必要な建築物のうち一定の建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為については、開発許可が不要となる。許可不要となる公益上必要な建築物は次の通り(主なもの)。

① 駅舎その他の鉄道の施設
② 図書館
③ 公民館
④ 変電所


Point1 診療所、病院、学校などは、許可不要となる公益上必要な建築物ではない


(2) 都市計画事業、土地区画整理事業などの施行として行う開発行為

 次の事業の施行として行う開発行為については、開発許可が不要となる。

① 都市計画事業
② 土地区画整理事業
③ 市街地再開発事業
④ 住宅街区整備事業
⑤ 防災街区整備事業

 都市計画事業等は、それぞれ別の法律で必要な規制が行われるからである。5つの事業を忘れてしまった場合は、「~事業」とついたら許可不要と考えればよい。


(3) 小規模な開発行為

 区域の区分に応じ、次の規模の開発行為については、開発許可が不要となる。

市街化区域1,000㎡未満
区域区分が定められていない都市計画区域3,000㎡未満
準都市計画区域3,000㎡未満
都市計画区域および準都市計画区域外の区域1ha(10,000㎡)未満


Point2 市街化区域であっても、三大都市圏の一定の区域においては、開発許可が不要となる面積が500㎡未満とされる。


Point3 小規模な開発行為の例外は市街化調整区域には認められていない。市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域だからである。

(4) 農林漁業用の建築物を建築するための開発行為

 市街化区域以外の区域内で行う開発行為で、一定の農林漁業用建築物の建築の用に供する目的で行うものについては、開発許可が不要となる。許可不要となる農林漁業用建築物は次の通り(主なもの)。

① 農産物、林産物または水産物の生産または集荷の用に供する建築物
② 農業、林業または漁業の生産資材の貯蔵または保管の用に供する建築物
③ 農林漁業を営む者の居住の用に供する建築物


Point4 農林漁業用の建築物を建築するための開発行為は、市街化区域以外の区域内では、常に開発許可が不要となる。


Point5 農林漁業用の建築物を建築するための開発行為の例外は、市街化区域では認められない。したがって、原則どおり1,000㎡以上の開発行為は許可が必要である。市街化区域は、積極的に街づくりをする区域であるため、農林漁業とは相性が悪い。そのため、例外を認めないのである。


Point6 農産物、林産物または水産物の貯蔵加工の用に供する建築物は、許可不要となる農林漁業用建築物ではない。


(5) その他

 次の開発行為も、開発許可が不要となる。

① 非常災害のため必要な応急措置として行う開発行為
② 通常の管理行為、軽易な行為で一定のもの

 これらは、他の場合も例外的に許可不要となる場合が多いので、あわせて覚えるべきである。


【開発許可が不要となる場合(まとめ)】


都市計画区域準都市計画
区域
都市計画区域および準都市計画区域外の区域
市街化区域市街化調整
区域
区域区分が定められていない
都市計画区域
小規模な
開発行為
1,000㎡未満3,000㎡未満3,000㎡未満1ha未満
(10,000㎡)
農林漁業用
建築物
不要不要不要不要
区域を問わず開発許可が
不要なもの
・公益上必要な建築物の建築のための開発行為
・都市計画事業、土地区画整理事業などの施行として行う開発行為
・非常災害のため必要な応急措置として行う開発行為
・通常の管理行為や軽易な行為 など



国等の開発許可の特例


国または都道府県等が行う開発行為については、当該国の機関または都道府県等と都道府県知事との協議が成立することをもって、開発許可があったものとみなされる。

※ 都市計画法における「都道府県等」とは、都道府県・指定都市等・事務処理市町村、これらがその組織に加わっている一部事務組合・広域連合・港務局をいう。