• 憲法ー5.経済的自由権
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  • Sec.1

11.経済的自由権

堀川 寿和2022/03/14 13:11

 職業選択の自由、居住・移転の自由、財産権を総称して経済的自由権という。経済的自由権は、封建的な支配関係から脱して、自由な経済活動を求める近代市民階級によって主張されたものであり、市民革命当初は、不可侵の人権として厚く保護された。しかし、現代においては、社会国家理念に基づき、自由な経済活動、自由競争により生ずる弊害を是正するため、経済的自由は社会的に拘束を負ったものとして、社会的公共の見地から法律によって積極的に規制しうるものとされている。

 人権に対する制約原理としての『公共の福祉』は、基本的には内在的制約を意味し、内在的制約を超えて人権に対して制約を加えることは許されない。ただ、経済的自由については、内在的制約に加えて、経済的・社会的弱者の生存の保障という観点からする政策的制約も認められる。社会国家理念を実現するための社会権の保障は、必然的に、経済的自由(とくに経済的・社会的強者の経済的自由)に対する規制を伴うことになるからである。

 221項及び292項が、とくに『公共の福祉』による制約を明記しているのは、政策的制約を確認するためだと解されている。