- 憲法ー2.基本的人権総論
- 1.人権の観念と内容
- 人権の観念と内容
- Sec.1
1人権の観念と内容
■人権の観念
人権とは、人が人たることに基づいて当然に有する権利であり、次の2点を基礎としている。
1. 個々の人間に最高の価値を認める『個人の尊厳』という価値を前提とする。
2. 人権は憲法や国家によって与えられたものではなく、人間の価値そのものに由来する前憲法的・前国家的権利である。
■旧憲法における人権概念と日本国憲法における人権概念との比較
(1) 旧憲法
旧憲法下でも人権保障は存在したが、その内容は充分とはいえなかった。その特色は次の3点である。
① 国民は、天皇の『臣民』であり、そこで保障される人権は天賦の人権ではなく、 国家によって恩恵的に付与されたものという性格を有していた。
② 人権のほとんどが『法律の留保』の基におかれ、法律をもってすれば制限を加えることが可能であった。
cf. 『法律の留保』の2つの意味
1. 行政権は、国民代表議会の立法権に基づく法律によらなければ国民の権利を制限することができない。
2. 立法権は、法律によりさえすれば国民の権利・自由を制限することができる。
※ 日本国憲法は2.の意味の法律の留保を否定する
③ 独立命令、緊急勅令が認められ、戒厳大権、非常大権などの例外的措置があった。
(2) 日本国憲法
日本国憲法は、第3章に「国民の権利及び義務」を設け、詳細に人権保障を規定している。日本国憲法における人権は、次の3つの性格を有する。
① 固有性
人権は、憲法や天皇から恩恵として与えられたものではなく、人間であることにより当然に有するものとされる。
② 不可侵性
人権は原則として公権力によって侵されない。
③ 普遍性
人権は、人種・性・身分などの区別に関係なく、人間であることに基づいて当然に享有できる。
|
旧憲法 |
日本国憲法 |
人権の性格 |
天皇から賜った臣民の権利 |
侵すことのできない固有の権利 |
制約 |
法律の留保 |
公共の福祉 |
社会権 |
なし |
あり(25条~) |
保障の例外 |
非常大権、戒厳大権、緊急勅令など |
保障の例外なし |
裁判所の法令審査権 |
なし |
あり(81条) |
■人権の類型
基本的人権は、様々な分類の仕方があるが、通説的見解では次のように分類している。
1. 包括的基本権
2. 法の下の平等
3. 自由権
自由権は、『国家からの自由』である。つまり、国家が個人の領域に対して権力的に介入することを排除し、個人の自由な意思決定と活動とを保障する人権であるということができる。『自由主義』とまさに直接的に結びつく。
4. 参政権
参政権は、個人が政治に参加する権利であり、『民主主義』と結びつく権利である。つまり、自由権の確保のための手段たる権利であるといえ、『国家への自由』という言葉で説明される。
5. 社会権
自由権により個人の自由な活動が保障されれば、当然に活動の結果に差が生まれる。そのことによって生まれた社会的・経済的弱者が『人間に値する生活』を送ることができるように、国家に積極的な配慮を求めることができる権利である。『国家による自由』という言葉で説明される。
6. 受益権(国務請求権)