• 刑法(各論)ー8.公共の信用に対する罪
  • 4.支払用カード電磁的記録に関する罪
  • 支払用カード電磁的記録に関する罪
  • Sec.1

1支払用カード電磁的記録に関する罪

堀川 寿和2022/02/10 14:54

意義

平成13年の刑法改正によって「第18章の2」として支払用カード電磁的記録に関する罪が新設された。(刑法163条の2〜163条の5)

クレジットカード、プリペードカードなどの電磁的記録を構成部分とする支払用カードが広く普及して支払決済手段として広く使用されるようになり、近時、支払用カードの電磁的記録情報を機械的手段により密かに取得するスキミングという方法で不正取得して、支払用カードを偽造し、偽造カードを利用して商品を購入・換金する行為が横行するようになったことから、それに対する対処が要請され、新たな立法が行われた。

支払用カード電磁的記録不正作出等罪(刑法163条の2)

 

刑法163条の2(支払用カード電磁的記録不正作出等)

1.人の財産上の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する電磁的記録であって、クレジットカードその他の代金又は料金の支払用のカードを構成するものを不正に作った者は、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。預貯金の引出用のカードを構成する電磁的記録を不正に作った者も、同様とする。

2.不正に作られた前項の電磁的記録を、同項の目的で、人の財産上の事務処理の用に供した者も、前項と同様とする。

3.不正に作られた第1項の電磁的記録をその構成部分とするカードを、同項の目的で、譲り渡し、貸し渡し又は輸入した者も、同項と同様とする。

 

(1) 構成要件

1項

人の財産上の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する電磁的記録であって、クレジットカードその他の代金又は料金の支払用のカード(プリペードカードやカード型電子マネー)を構成するものを作ることである。預貯金の引出用のカードを構成する電磁的記録(キャッシュカード)を作った場合も同様である。用に供するとは、キャッシュカードをATMに差し込んだりクレジットカードを照会端末に通させたりすることである。

2項

不正に作られた事務処理の用に供する電磁的記録を、人の財産上の事務処理を誤らせる目的で、人の財産上の事務処理の用に供すること。

3項

不正に作られた事務処理の用に供する電磁的記録をその構成部分とするカードを、人の財産上の事務処理を誤らせる目的で、譲り渡し、貸し渡し、又は輸入すること。

 

(2) 刑罰

10年以下の懲役又は100万円以下の罰金。未遂の処罰規定あり。(刑法163条の5)

 

不正電磁的記録カード所持罪(刑法163条の3)

 

刑法163条の3(不正電磁的記録カード所持)

前条第1項の目的で、同条第3項のカードを所持した者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

 

(1) 構成要件

人の財産上の事務処理を誤らせる目的で、不正に作られた事務処理の用に供する電磁的記録をその構成部分とするカードを所持することである。

 

(2) 刑罰

5年以下の懲役又は50万円以下の罰金。