• 刑法(各論)ー7.公共の平穏に対する罪
  • 2.失火の罪
  • 失火の罪
  • Sec.1

1失火の罪

堀川 寿和2022/02/10 14:16

失火の罪の種類

 

失火の罪

失火罪(刑法116条)

業務上失火罪(刑法117条の2)

重過失失火罪(刑法117条の2)

 

失火罪(刑法116条)

 

刑法111条(延焼)

1.失火により、第108条に規定する物又は他人の所有に係る第109条に規定する物を焼損した者は、50万円以下の罰金に処する。

2.失火により、第109条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第110条に規定する物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。

 

(1) 構成要件

111条1項

失火により、刑法108条に規定する物又は他人の所有に係る109条に規定する物を焼損することである。

111条2項

失火により、刑法109条に規定する物であって、自己の所有に係る物又は刑法110条に規定する物を焼損し、よって公共の危険を生じさせることである。

客体

(イ)現住建造物

抽象的危険犯であり、具体的に公共の危険を発生することを要しない。

(ロ)非現住建造物

a)他人所有の場合

抽象的危険犯であり、具体的に公共の危険を発生することを要しない。

b)自己所有の場合

具体的危険犯であり、具体的に公共の危険を発生してはじめて本罪の客体となる。

(ハ)建造物等以外

具体的危険犯であり、他人所有、自己所有の場合を問わず具体的に公共の危険を発生してはじめて本罪の客体となる。

 

(2) 刑罰

50万円以下の罰金

 

業務上失火罪(刑法117条の2前段)

 

刑法117条の2(前段)

第116条又は前条第1項の行為が業務上必要な注意を怠ったことによるときは、3年以下の禁錮又は150万円以下の罰金に処する。

 

(1) 構成要件

失火が、業務上必要な注意を怠ったことによることである。

主体

業務者である。したがって本罪は身分犯である。ここでいう業務とは、社会生活上の地位に基づいて反覆継続する事務をさすが、反覆継続して火気を取り扱う主婦も業務者に入ってしまうので、ここでいう業務は、特に職務として火気の安全に配慮すべき社会生活上の地位にある者に限られる。(最S60. 10.21)ex)ボイラーマン、調理師、ホテルやデパ一ト等の防火責任者 *主婦は含まず。

行為

業務者が業務上必要な注意を怠って、刑法116条の失火の罪を犯すことである。

 

(2) 刑罰

3年以下の禁錮又は150万円以下の罰金。失火罪の加重類型である。