- 刑法(各論)ー2.生命•身体に対する罪
- 3.傷害の罪
- 傷害の罪
- Sec.1
1傷害の罪
■暴行罪
刑法208条(暴行)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
(1) 構成要件
人の身体に暴行を加えたが、人を傷害するに至らなかったこと。
① 主体
限定なし。
② 客体
行為者を除く人の身体である。
③ 行為
暴行を加えることである。
刑法は、個々の条文の構成要件的行為として「暴行」という語を用いているが、その内容については、各犯罪ごとに異なっている。
暴行概念 |
暴行の客体 |
暴行の程度 |
該当する犯罪の種類 |
最広義の暴行 |
人・物問わない |
公共の平穏を害する程度 |
内乱罪(刑法77条) 騒乱罪(刑法106条) 多衆不解散罪(刑法107条) |
広義の暴行 |
人、人の身体に物理的影響力を与える場合、物も含む |
人の身体に物理的影響を与える程度 |
公務執行妨害罪(刑法95条1項) 職務強要罪(刑法95条2項) 加重逃走罪(刑法98条) 逃走援助罪(刑法100条) 強要罪((刑法223条) 等 |
狭義の暴行 |
人の身体 |
人の身体に対する不法な有形力の行使 |
暴行罪(刑法208条) |
最狭義の暴行 |
人 |
人の反抗を抑圧するに足りる程度の強度な不法な有形力の行使 |
強制わいせつ罪(刑法176条) 強制性交等罪(刑法177条) |
人の反抗を抑圧するに足りる程度の強度の不法な有形力の行使 |
強盗罪(刑法236条) 事後強盗罪(刑法238条) |
判例 |
(大阪地裁S42.5.13) |
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耳元で拡声器を用いて大声を発する行為は、暴行罪を構成する。 |
判例 |
(最S39.1.28) |
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(狭い)四畳半の部屋で被告人が被害者を脅かすため同人の目前で日本刀の抜き身を数回振り回した行為は暴行罪に該当する。 |
判例 |
(大M45.6.20) |
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人の毛髪鬚髯を不法に裁断剃去する行為は、暴行に当る。 |
(2) 刑罰
2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料。
■傷害罪
刑法204条(傷害)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
(1) 構成要件
人の身体を傷害すること。
① 主体
限定なし。
② 客体
行為者を除く人の身体である。
③ 行為
傷害することである。有形的方法つまり暴行を手段とする場合に限らず、無形的方法によっても傷害し得ることから、例えば、いやがらせ電話で相手の精神衰弱を生ぜしめる行為や、だまして落とし穴に転落させて怪我をさせる等も傷害罪に当たる。
判例によると、傷害とは人の生理的機能を害することをいう。したがって、前述のとおり、人の髪の毛を無断できる行為は、生理的機能を害するわけではないため、傷害罪ではなく暴行罪とされている。
判例 |
(最S27.6.6) |
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故意に大量の風邪薬を服用させ、肝機能障害に陥らせた場合、傷害罪が成立する。 |
(2) 刑罰
15年以下の懲役又は50万円以下の罰金。
傷害の故意で行為に出たが暴行に止まった場合、理論上は傷害未遂だが、傷害罪には未遂の処罰規定がなく、暴行罪とされる。