- 刑法(総論)ー9.共犯論
- 7.従犯(幇助犯)
- 従犯(幇助犯)
- Sec.1
1従犯(幇助犯)
■従犯の意義
従犯とは、正犯を幇助した者をいう。(刑法62条1項)幇助犯ともいう。
自ら実行を分担しない点で共同正犯と異なり、またすでに犯罪の決意のある者の手助けをするという点で、まだその決意のない者に決意を生じさせる教唆犯と異なる。
■従犯の成立要件
従犯が成立するためには、次の要件が必要である。
・正犯を幇助すること ・幇助行為によって被幇助者が犯罪を実行したこと |
(1) 正犯を幇助すること
① 幇助行為
幇助行為とは、実行行為以外の行為によって正犯の実行を容易にすることをいう。
犯罪を決意した者に武器を供与したりする有形的方法が典型であるが、激励や助言といった無形的な方法による場合も幇助となり得る。
判例 |
(大T14.1.22) |
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他人の賭博開帳行為を幇助するため、一方的に賭者を誘引する行為は、片面的従犯となる。 |
② 不作為による幇助
幇助は不作為によっても行い得る。例えば、会社の倉庫係が作為義務を怠って同僚が倉庫内の物品を窃取することを黙認した場合は、窃盗罪の従犯となる。
(2) 被幇助者が犯罪を実行したこと
幇助犯が成立するためには、被幇助者たる正犯者が犯罪を実行したことが必要である。
幇助行為は行われたのに、被幇助者が実行行為に出なかった場合、従犯は成立しない。(幇助未遂)
cf 幇助に基づいて正犯が実行行為に出たが、それが未遂に終わった場合には、未遂罪の幇助となることと比較。
正犯が共犯の故意よりも重い犯罪を実行した場合、共犯には共犯の故意と正犯の犯した犯罪の構成要件が実質的に重なり合う範囲で軽い犯罪の共犯が成立するため、例えばAはBがCに対して暴行を加えるのを手助けする意思でBに凶器の鉄パイプを貸したところ、Bは殺意をもってその鉄パイプでCを撲殺した場合、Aには殺人罪の幇助犯ではなく傷害致死罪の幇助犯が成立する。