- 刑法(総論)ー9.共犯論
- 6.教唆犯
- 教唆犯
- Sec.1
1教唆犯
■教唆犯の意義
教唆犯とは、人を教唆して犯罪を実行させた者をいう。(刑法61条)
教唆犯は、自らが実行行為をしなかった点で共同正犯と異なり、他人に犯罪の決意を生じさせるという点で、すでに犯罪を決意している正犯の実行行為を手助けする従犯(幇助犯)と区別される。
■教唆犯の成立要件
教唆犯が成立するためには、次の要件を必要とする。
・人を教唆すること ・被教唆者がその教唆によって犯罪を実行すること |
(1) 人を教唆すること
① 意義
人を教唆するとは、具体的には、犯罪意思のない他人をそそのかして犯罪意思を抱かせることをいう。したがって、すでに犯罪実行の決意をしている者を激励することは、教唆とは言えず教唆犯にはならない。また、被教唆者に特定の犯罪を実行する決意を抱かせることが必要であり、単に犯罪行為を行うことをそそのかしただけでは教唆とは言えない(大T13.3.3)(ex 臭い飯を食うようなことでもやってこい!)
② 教唆行為
教唆の方法に制限はなく、指揮、命令、嘱託、依頼、勧告、誘導等いずれでもよい。また、明示的であっても黙示的であってもよい。なお、犯罪行為の決意を生じさせなければ教唆したことにはならないことから、教唆犯の対象となる犯罪は故意犯に限られ、過失犯への教唆は成立しない。
(2) 被教唆者が犯罪を実行したこと
被教唆者が現にその犯罪を実行したことをいう。被教唆者が実行に出なかった場合や、実行に出たが教唆行為との間に因果関係が認められない場合には、教唆犯は成立しない。
■教唆犯の処罰
(1) 正犯の刑を科する
教唆犯には、正犯の刑を科する(刑法61条)とされている。これは、正犯に成立する犯罪の法定刑の範囲内で処罰されるという意味である。
判例 |
(大M44.12.18) |
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正犯が未遂に終わったときは、未遂犯の刑を科されるが、教唆者が処罰されるためには、正犯が現実に処罰される必要はない。 |
(2) 拘留又は科料のみに処すべき犯罪の教唆
例えば、侮辱罪(刑法231条)のように拘留又は科料のみに処すべき犯罪の教唆者については、特別の規定がある場合に限り処罰される。(刑法64条)特別な規定がある場合とは、例えば軽犯罪法3条等が挙げられる。したがって、法定刑が罰金刑のみの罪については教唆犯も処罰されることになる。