• 刑法(総論)ー9.共犯論
  • 4.共謀共同正犯
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  • Sec.1

1共謀共同正犯

堀川 寿和2022/02/10 10:53

共謀共同正犯の意義

2人以上の者が犯罪の実行を共謀し、そのうちのある者が共謀した犯罪の実行に出た場合、実行行為に出ない他の共謀者も共同正犯となるとする説が共謀共同正犯理論である。この場合において、実行しない共謀者を共謀共同正犯という。

共謀共同正犯理論

前述のとおり、共同正犯の成立には、「共同実行の意思」と「共同実行の事実」が必要であるが、単に謀議に参加し、直接実行行為を分担しなかった者についても、共同実行の事実ありといえるかという問題が共謀共同正犯理論である。

 

(1) 否定説

共同正犯の成立には「共同実行の意思」と「共同実行の事実」が必要であることから、単に謀議に止まる者は共同実行の事実はなく、共同正犯とはならないと考える説である。

 

(2) 肯定説(判例)

2人以上の者が一定の犯罪を目的として共謀するときには、そこに犯罪を目的とした共同意思主体が形成され、その上で共謀者の1人が犯罪の実行行為にでれば、それは共同意思主体の行為と考えられ、直接実行行為をしなかった者も団体の一員であることによって一体となって実行したこととなり、共同正犯となると考える説である。

 

(3) 判例の立場

判例は、一貫して共謀共同正犯理論を認めている。

共謀共同正犯の成立要件

 

・共謀の存在

・共謀者の一部による実行行為

 

(1) 共謀の存在

2人以上の者が犯罪の実現について共謀したことが必要である。共謀は単なる意思連絡では足りず、共同犯行の認識といえる程度に至ったものでなければならない。なお、共謀の方法は明示的でも黙示的でもよく、暗黙の共謀でも足りる。(最S23. 11.30)また、順次に共謀する順次共謀でもよい。

 

(2) 共謀者の一部による実行行為

共同正犯となるためには、少なくとも共謀者の1人以上の者が実行に着手することが必要である。