- 宅建業法ー9.8種制限
- 9.担保責任についての特約の制限
- 担保責任についての特約の制限
- Sec.1
1担保責任についての特約の制限
購入した宅地や建物が、種類または品質に関して契約の内容に適合しない場合に、買主は売主に対して目的物の種類・品質に関する契約不適合責任(担保責任)を追及することができる。民法上は、この契約不適合責任は任意規定であるため、「売主は契約不適合責任を負わない」とする特約も有効である。しかし、宅建業者が自ら売主となり、宅建業者でない者が買主となる宅地や建物の売買については、買主である一般消費者の利益を保護するために、宅建業法は、原則として、民法に規定するものより買主に不利となる特約をすることができないこととしている。
■民法の規定
まず、民法の規定を確認しておく。民法によると、売買の目的物が種類または品質に関して契約の内容に適合しない場合、買主には、売主に対する次のような請求権が認められる。
① 追完請求権(たとえば修補請求など)
② 代金減額請求権(①による履行が追完されない場合に行使できる) ③ 損害賠償請求権(売主に帰責事由がある場合に行使できる) ④ 契約の解除権 |
なお、③を除き、売主に帰責事由(故意または過失)がなくても請求権を行使することができる。
ただし、売主が種類または品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合に、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、上記①~④の請求権を行使することができない(売主が引渡しの時にその不適合を知り、または重大な過失によって知らなかったときを除く)。
■特約の効力(原則)
宅建業者は、自ら売主となる宅地建物の売買契約において、その目的物が種類または品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。
これに反して買主に不利な特約は無効となる。 |
【有効となる特約・無効となる特約の具体例(1)】
有効となる特約の例(民法と同じか買主に有利) | 無効となる特約の例(民法より買主に不利) |
① 買主が不適合を知った時から1年6か月以内にその旨を売主に通知すれば、契約不適合責任を追及することができる。
② 売主に過失がない場合であっても、損害賠償請求をすることができる。 ③ 損害賠償請求、契約の解除だけでなく、修補請求や代金減額請求もすることができる。 | ① 買主が不適合を知った時から6か月以内にその旨を売主に通知しないと、契約不適合責任を追及することができない。
② 売主に過失がない場合は、代金減額請求をすることができない。 ③ 修補請求をすることができるが、契約の解除はすることができない。 |
■買主に不利な特約であっても有効となる場合(例外)
宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地建物の売買契約において、その目的物が種類または品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、買主が契約不適合を売主に通知すべき期間についてその目的物の引渡しの日から2年以上となる特約は、買主に不利となる場合であっても、有効である。 |
たとえば、買主が契約不適合を売主に通知すべき期間について「目的物の引渡しの日から2年間」とする特約は、有効である。このような特約がある場合は、目的物の引渡しの日から2年を経過すると、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しても、契約不適合責任を追及することができなくなるので、民法の規定よりも買主に不利となるが、このような特約は有効とされる。
なお、特約によって定めることができるのは、買主による通知期間であって、売主が契約不適合責任(担保責任)を負う期間ではない。したがって、たとえば、通知期間が「目的物の引渡しの日から2年間」とされている場合、この期間中に契約不適合を売主に通知さえしていれば、引渡しの日から2年を経過した後でも、契約不適合責任(担保責任)を売主に追及することができる。
【有効となる特約・無効となる特約の具体例(2)】
有効となる特約の例 | 無効となる特約の例 |
買主による契約不適合の通知期間を
① 目的物の引渡しの日から2年間とする ② 目的物の引渡しの日から3年間とする | 買主による契約不適合の通知期間を
① 目的物の引渡しの日から1年間とする ② (目的物の引渡し日は契約締結の日の1週間後として)売買契約の締結の日から2年間とする |
Point1 買主が契約不適合を売主に通知すべき期間が目的物の引渡しの日から2年未満である場合に、特約は無効となる。
Point2 契約が無効となった場合は、契約不適合の通知期間が「目的物の引渡しの日から2年間」になるわけではない。この場合は、民法の原則に戻るので、目的物の引渡しの日から2年を経過していても、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知すれば、契約不適合責任を追及することができる。