• 司法書士法ー2.司法書士法人
  • 3.司法書士法人の社員の権限・責任・義務等
  • 司法書士法人の社員の権限・責任・義務等
  • Sec.1

1司法書士法人の社員の権限・責任・義務等

堀川 寿和2022/02/08 14:57

業務の執行

(1) 簡裁訴訟代理等関係業務以外の業務の執行

 司法書士法人の社員は、すべて業務を執行する権利を有し、義務を負う(法361項)。

 

Point 司法書士法人の社員は、すべて業務を執行する権利を有するので、司法書士法人は、定款の定めをもってしても、一部の社員について、業務執行権を有しないものとすることはできない。

 

(2) 簡裁訴訟代理等関係業務の執行

 簡裁訴訟代理等関係業務を行うことを目的とする司法書士法人における簡裁訴訟代理等関係業務については、「認定司法書士」〔法32項に規定する司法書士〕である社員(以下「特定社員」という。)のみが業務を執行する権利を有し、義務を負う(法362項)。

法人の代表

(1) 簡裁訴訟代理等関係業務以外の業務についての代表権

 司法書士法人の社員は、各自司法書士法人を代表する(法371項本文)。ただし、定款または総社員の同意によって、社員のうち特に司法書士法人を代表すべきものを定めることができる(法371項ただし書)。

 

(2) 簡裁訴訟代理等関係業務についての代表権

 簡裁訴訟代理等関係業務を行うことを目的とする司法書士法人における簡裁訴訟代理等関係業務については、特定社員のみが、各自司法書士法人を代表する(法372項本文)。ただし、当該特定社員の全員の同意によって、当該特定社員のうち特に簡裁訴訟代理等関係業務について司法書士法人を代表すべきものを定めることができる(法372項ただし書)。

 

Point 簡裁訴訟代理等関係業務については、特定社員以外の司法書士、つまり「認定司法書士」〔法32項に規定する司法書士〕である社員以外の司法書士は、司法書士法人を代表することができない。

 

(3) 司法書士法人を代表する社員の権限

 司法書士法人を代表する社員〔法371項〕は、司法書士法人の業務(上記(2)〔法372項〕の簡裁訴訟代理等関係業務を除く。)に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する(法373項)。

 司法書士法人を代表する社員の権限〔法373項〕に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない(法374項)。

 司法書士法人を代表する社員は、定款によって禁止されていないときに限り、特定の行為の代理を他人に委任することができる(法375項)。

社員の責任

(1) 原則

 原則として、社員は、司法書士法人の債務について責任を負わない。ただし、次の場合には、各社員は連帯してその弁済の責任を負う(法381項・2項)。

司法書士法人の財産をもってその債務を完済することができない場合(法381項)

司法書士法人の財産に対する強制執行がその効を奏しなかった場合〔社員が司法書士法人に資力があり、かつ、執行が容易であることを証明した場合を除く。〕(法382項・3項)。

 

(2) 例外〔簡裁訴訟代理等関係業務に関し依頼者に対して負担することとなった債務〕

 簡裁訴訟代理等関係業務を行うことを目的とする司法書士法人が簡裁訴訟代理等関係業務に関し依頼者に対して負担することとなった債務については、次の場合には、特定社員〔当該司法書士法人を脱退した特定社員を含む。〕が、連帯して、その弁済の責任を負う(法384項・5項)。ただし、当該司法書士法人を脱退した特定社員については、当該債務が脱退後の事由により生じた債務であることを証明した場合は、責任を負わない(法384項ただし書)。

① その債務を当該司法書士法人の財産をもって完済することができないとき(法384項)

② その債務についての司法書士法人の財産に対する強制執行がその効を奏しなかったとき〔特定社員が当該司法書士法人に資力があり、かつ、執行が容易であることを証明した場合を除く。〕(法385項)

 

Point 簡裁訴訟代理等関係業務を行うことを目的とする司法書士法人が簡裁訴訟代理等関係業務に関し依頼者に対して負担することとなった債務については、特定社員のみが、連帯して、その弁済の責任を負う。

 

(3) 脱退した社員の責任

 脱退した社員は、その登記をする前に生じた司法書士法人の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う〔上記(2)の債務を除く。〕(法386項、会社法6121項)。

 なお、この責任は、その登記後2年以内に請求または請求の予告をしない司法書士法人の債権者に対しては、当該登記後2年を経過した時に消滅する(法386項、会社法6122項)。

 

(4) 社員であると誤認させる行為をした者の責任

 社員でない者が自己を社員であると誤認させる行為をしたときは、当該社員でない者は、その誤認に基づいて司法書士法人と取引をした者に対し、社員と同一の責任を負う(法38条の2)。