- 司法書士法ー1.司法書士
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1司法書士
■司法書士となる資格
司法書士になるには、司法書士となる資格を有している必要がある。
(1) 司法書士となる資格
次のいずれかに該当する者は、司法書士となる資格を有する(司法書士法〔以下「法」という。〕4条)。
① 司法書士試験に合格した者 ② 裁判所事務官、裁判所書記官、法務事務官もしくは検察事務官としてその職務に従事した期間が通算して10年以上になる者またはこれと同等以上の法律に関する知識および実務の経験を有する者であって、法務大臣が司法書士の業務(簡裁訴訟代理等関係業務を除く。)〔法3条1項1号から5号までに規定する業務〕を行うのに必要な知識および能力を有すると認めたもの |
(2) 欠格事由
上記(1)に該当する者であっても、次の者は、司法書士となる資格を有しない(法5条)。したがって、後述する「司法書士名簿への登録」を受けることができない。
① 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなってから3年を経過しない者 ② 未成年者 ③ 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者 ④ 公務員であって懲戒免職の処分を受け、その処分の日から3年を経過しない者 ⑤ 司法書士に対する懲戒処分〔法47条〕として業務の禁止の処分を受け、その処分の日から3年を経過しない者 ⑥ 懲戒処分により、公認会計士の登録を抹消され、または土地家屋調査士、弁理士、税理士もしくは行政書士の業務を禁止され、これらの処分の日から3年を経過しない者 |
Point1 禁錮以上の刑とは、死刑・懲役・禁錮をいう。禁錮以上の刑に処せられた場合であっても、刑の執行を猶予された者は、猶予期間中は刑の執行をまだ終了していないため、司法書士となる資格を有しないが、その後、刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予期間を経過したときは、刑の言渡しは、効力を失うため(刑法27条)、「禁錮以上の刑に処せられた」とはいえないことになる。つまり、執行猶予期間が満了したら直ちに〔その後3年を経過しなくても〕司法書士名簿への登録を受けることができる〔上記①参照〕。
Point2 司法書士に対する懲戒処分であっても「戒告」または「業務の停止」の処分の場合は、欠格事由とはならない〔上記③参照〕。
Point3 外国籍であることは欠格事由となっていないので、外国籍の者も、司法書士となる資格を有する。
Point4 司法書士が宅地建物取引業を兼業しても、司法書士法には違反しない。
■司法書士名簿への登録、司法書士会への入会
司法書士となる資格を有しているだけでは、まだ司法書士とはいえない。司法書士となる資格を有する者が司法書士になるには、司法書士名簿への登録を受けなければならない。また、同時に、司法書士会にも入会しなければならない〔入会の手続をとらないと、登録を受けることができない〕。
(1) 司法書士名簿の登録
① 登録
司法書士となる資格を有する者が、司法書士となるには、日本司法書士会連合会に備える司法書士名簿に、所定の事項の登録を受けなければならない(法8条1項)。
② 登録事項
司法書士名簿への登録事項は、次のとおり(法8条1項、司法書士法施行規則〔以下「規則」という。〕15条2項)。
(a) 氏名 (b) 生年月日 (c) 事務所の所在地 (d) 所属する司法書士会 (e) 本籍(外国人にあっては、国籍等) (f) 住所 (g) 男女の別 (h) 司法書士となる資格の取得の事由および年月日 (i) 登録番号 (j) 法3条2項2号に規定する法務大臣の認定を受けている司法書士にあっては、その旨、認定年月日および認定番号 |
③ 登録機関
司法書士名簿の登録は、日本司法書士会連合会(以下「連合会」という。)が行う(法8条2項)。
(2) 登録の申請
司法書士名簿の登録〔法8条1項〕を受けようとする者は、その事務所を設けようとする地を管轄する法務局または地方法務局の管轄区域内に設立された司法書士会を経由して、連合会に登録申請書を提出しなければならない(法9条1項)。
(3) 司法書士会への入会
登録の申請〔法9条1項〕をする者は、その申請と同時に、申請を経由すべき司法書士会に入会する手続をとらなければならない(法57条1項)。入会の手続〔法57条1項〕をとった者は、当該登録の時に、当該司法書士会の会員となる(法57条2項)。
Point1 連合会の登録を受けても、当然に司法書士会に入会したものとはみなされないため、司法書士会への入会には入会の手続をとる必要がある。
Point2 司法書士の業務を行うためには、事務所を設けようとする地を管轄する法務局または地方法務局の管轄区域内に設立された司法書士会に入会しなければならないが、司法書士の業務はその事務所の所在地を管轄する法務局または地方法務局の管轄区域外であっても行うことができる。また、この場合に、その法務局または地方法務局の長への届出などは不要である。
【登録の申請・司法書士会への入会】
(4) 登録の拒否
① 登録の拒否
連合会は、登録の申請〔法9条1項〕をした者が司法書士となる資格を有せず、または次のいずれかに該当すると認めたときは、その登録を拒否しなければならない(法10条1項前段)。
(a) 司法書士会への入会の手続〔法57条1項〕をとらないとき。 (b) 心身の故障により司法書士の業務を行うことができないとき。 (c) 司法書士の信用または品位を害するおそれがあるときその他司法書士の職責に照らし司法書士としての適格性を欠くとき。 |
② 登録の拒否の手続〔登録審査会の議決が必要な場合〕
(a) 登録審査会の議決
当該申請者が上記①の登録拒否事由のうち(b)または(c)〔法10条1項2号または3号〕に該当することを理由にその登録を拒否しようとするときは、登録審査会〔法67条〕の議決に基づいてしなければならない(法10条1項後段)。
(b) 弁明の機会の付与
この場合、連合会は、あらかじめ、当該申請者にその旨を通知して、相当の期間内に自らまたはその代理人を通じて弁明する機会を与えなければならない(法10条2項)。
Point 登録審査会は、連合会の請求により、法10条1項2号もしくは3号の規定による登録の拒否または法16条1項の規定による登録の取消しについて審議を行うために連合会に設置される機関である(法67条1項・2項)。
(5) 登録に関する申請者への通知
連合会は、登録の申請〔法9条1項〕を受けた場合において、登録をしたときはその旨を、登録を拒否したときはその旨およびその理由を当該申請者に書面により通知しなければならない(法11条)。
Point1 登録が行われた場合も、登録が拒否された場合も、連合会から申請者に対して通知が行われる。
Point2 司法書士となる資格を有しない者が、日本司法書士会連合会に対し、その資格につき虚偽の申請をして司法書士名簿に登録させたときは、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる(法74条)。
(6) 登録を拒否された場合の審査請求
① 登録拒否処分に不服がある場合
登録を拒否〔法10条1項〕された者は、当該処分に不服があるときは、法務大臣に対して審査請求をすることができる(法12条1項)。
② 登録の申請の日から3か月経過しても何らの処分もされない場合
登録の申請〔法9条1項〕をした者は、その申請の日から3月を経過しても当該申請に対して何らの処分がされないときは、当該登録を拒否されたものとして、法務大臣に対して審査請求をすることができる(法12条2項)。
(7) 登録に関する法務局等の長への通知
連合会は、司法書士名簿に登録をしたときは登録事項を、遅滞なく、当該司法書士の事務所の所在地を管轄する法務局または地方法務局の長に通知しなければならない。
(8) 登録の公告
連合会は、司法書士の登録をしたときは、遅滞なく、その旨を官報をもって公告しなければならない(法18条)。
■登録事項の変更の届出
(1) 変更の届出
司法書士は、司法書士名簿に登録を受けた事項に変更(所属する司法書士会の変更を除く。)が生じたときは、遅滞なく、所属する司法書士会を経由して、連合会にその旨を届け出なければならない(法14条)。
【司法書士名簿への登録事項】
(a) 氏名 (b) 生年月日 (c) 事務所の所在地 (d) 所属する司法書士会 (e) 本籍(外国人にあっては、国籍等) (f) 住所 (g) 男女の別 (h) 司法書士となる資格の取得の事由および年月日 (i) 登録番号 (j) 法3条2項2号に規定する法務大臣の認定を受けている司法書士にあっては、その旨、認定年月日および認定番号 |
(2) 変更の登録に関する法務局等の長への通知
連合会は、変更の登録(所属する司法書士会の変更の登録を除く。)をしたときは、その旨を、遅滞なく、当該司法書士の事務所の所在地を管轄する法務局または地方法務局の長に通知しなければならない。