- 供託法ー17.不動産執行における供託
- 1.配当留保供託
- 配当留保供託
- Sec.1
1配当留保供託
■配当留保供託
(1) 配当留保供託の意義
たとえば、不動産の強制競売では、競売不動産の売却代金を債権者に配当等することになるが、債権者の債権が停止条件付などで当該債権者が直ちに配当等を受けられない場合がある。このような場合、裁判所書記官は配当等をすべき額を供託し、配当等の障害事由が消滅したときに改めて配当等を実施する(民執法91条、92条1項)。この供託を配当留保供託という。
(2) 配当留保供託をしなければならない場合
配当等を受けるべき債権者の債権につき、次の事由があるときは、裁判所書記官はその配当等の額に相当する金銭を供託しなければならない(民執法91条)。
① 停止条件付または不確定期限付であるとき(1号) ② 仮差押債権者の債権であるとき(2号) ③ 民執法39条1項7号または183条1項6号の執行の一時停止文書が提出されているとき(3号) |
(3) 供託金払渡手続
① 供託事由が消滅したとき
配当留保供託がなされた後、停止条件が成就し、または仮差押債権者が本案訴訟において勝訴して執行力ある確定判決を得るなどして供託事由が消滅したときは、供託金の払渡しは執行裁判所の配当等の実施としての支払委託に基づいて行われる(民執法92条1項)(昭55.9.6民四5333号)。
つまり、裁判所書記官が支払委託書を作成して供託所に送付する一方、払渡しを受けるべき者に証明書を交付し、その者が供託所から払渡しを受けるという方法で配当が行われる(供託規30条)。
② 債権者に配当等ができなくなったとき
a) 他に追加配当を受ける債権者がいる場合
追加配当を受ける債権者がいる場合には、新たに配当表を作成してその者に追加配当することになる。
b) 他に追加配当を受ける債権者がいない場合
債務者に供託金が交付されることになる。他の債権者に追加配当をした後に残金がある場合も同様である。
■不出頭供託
(1) 不出頭供託の意義
不出頭供託とは、執行手続において、配当等を受け取るべき債権者が受領のため出頭しない場合に、配当金または弁済金を供託する場合の供託をいう。先の配当留保の場合以外は、債権者に配当または弁済金の交付がなされるが、これは取立債務であり、債権者が受領のため執行裁判所に出頭する必要がある。しかし、出頭しない場合には、裁判所書記官は、その債権者に対する配当等に相当する金銭を供託しなければならない(民執法91条2項)。
(2) 供託手続
この不出頭供託は、弁済供託であるため、管轄は債務履行地の供託所である。具体的には、取立債務であるため、執行裁判所所在地の供託所が管轄供託所となる。