- 供託法ー16.執行供託
- 7.強制執行と滞納処分が競合した場合の供託
- 強制執行と滞納処分が競合した場合の供託
- Sec.1
1強制執行と滞納処分が競合した場合の供託
■滞調法が適用される場合
強制執行と滞納処分とが競合した場合、両者の調整をはかる必要があり、そのために「滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律」(以下、滞調法という)が定められている。滞調法は滞納処分と強制執行(差押え、仮差押え)が競合」した場合に限って適用され、両者の調整が必要でない次の場合には適用がない。
① 金銭債権につき滞納処分による差押えのみがなされている場合
第三債務者は、滞納処分による差押えを理由に供託することはできない。
② 滞納処分の二重差押えの場合
この場合も供託は認められていない。
③ 強制執行と滞納処分が競合しない場合
この場合、金額的に競合が生じないときにも滞調法の適用はない。それぞれ国税徴収法、民事執行法によって処理されることになる。
■滞納処分が先行する場合の供託
(1) 競合する場合
① 第三債務者による弁済
上記の場合、Bは滞納処分による差押えがなされた70万円については徴収職員等の取立に応じ(国徴法67条1項)、残り30万円については単発差押えの場合と同様になる。差押債権者の取立てに応じて弁済することもできるし、民執156条1項により供託することもできる(権利供託)。
また、第三債務者Bは、その債権全額に相当する金額(100万円)を債務履行地の供託所に供託することもできる。この場合の供託書には、被供託者の記載を要しない。執行供託だからである。
② 供託金の払渡手続
(イ)事情届
第三債務者がこの供託をしたときは、供託書正本を添付した上で、徴収職員等に事情届を出さなければならず(滞調法20条の6第2項)、徴収職員等がこの事情届を受けたときはその旨を執行裁判所に通知しなければならない(同条3項)。この通知には「供託書正本の保管を証する書面」を添付する。
(ロ)供託金の払渡し
滞納処分による差押えがなされた金額については、徴収職員の供託所に対する還付請求によって直接払い渡される。滞納処分による差押えの効力が及ばない残余の部分(30万円)については、執行裁判所の配当の実施としての支払委託に基づき払い渡される(昭55.9.6民四5333号)。
徴収職員が差押金額に相当する部分の払渡しの請求をするには、供託金払渡請求書に供託書正本を添付することを要する。
(2) 競合しない場合
上記の場合、差押えの競合がないため、滞調法が適用ない。差押えの前後が逆の場合も同様である。
滞調法の適用がない以上、滞調法による供託はできず、滞納処分による差押えがなされている50万円の部分については、徴収職員等の取立てに応じて弁済しなければならない(国徴法67条)。
残り50万円については、それに対し30万円の差押えがあったものと見て、Bは30万円か50万円いずれかの額を供託することができる(民執法156条1項)。
なお、この強制執行による差押えに対して配当要求がなされたときは、第三債務者Bは、差押金額に相当する金銭30万円を供託しなければならない(民執法156条2項)(昭55.9.6民四5333号)。
■滞納処分による差押え後に強制執行による差押え等が競合した場合
(1) 滞納処分による差押え部分の弁済
上記の場合、滞納処分による差押え部分の50万円については、第三債務者Bは供託義務を負わない。徴収職員が直接取立てをすることになる。
(2) 強制執行による差押えが競合する部分の弁済
金銭債権の一部について滞納処分による差押えがなされている場合において、さらに強制執行による差押えと強制執行による差押えまたは仮差押えの執行とが競合したときは、第三債務者は、滞納処分による差押えの残余の額に相当する金銭を債務履行地の供託所に供託しなければならず、Bは、滞納処分による差押えの残額50万円につき、供託しなければならない(民執法156条2項)(昭55.9.6民四5333号)。残額部分50万円について、差押えが競合しているからである。
滞納処分による差押えの残余の額を超えて強制執行による差押えがされ、これについて配当要求がされたときも同様に、第三債務者Bは、残額50万円を供託しなければならない。50万円の債権について、差押えと配当要求があった場合に当たるからである。