- 供託法ー14.供託官の処分に対する不服申立て
- 1.供託官の処分に対する不服申立て
- 供託官の処分に対する不服申立て
- Sec.1
1供託官の処分に対する不服申立て
■不服申立ての方法
供託官の処分に対する不服申立ての方法には次の2つの方法がある。
① 審査請求・・・上級行政庁に対する行政的救済の申立て ② 行政訴訟・・・裁判所に対する司法的救済の申立て |
■審査請求
(1) 審査請求の意義
供託官の処分に不服がある者または供託官の不作為に係る処分についての申請をした者は、監督法務局または地方法務局の長に審査請求をすることができる(供託法1条の4)。
(2) 審査請求の要件
次の2つの要件が必要である。
① 供託官の不当な処分であること ② 供託官の不当処分に関し法律上の利害関係を有する者からの請求であること |
① 供託官の不当な処分であること
a) 供託官の処分であること
供託申請に対する受理または却下、供託物の払渡請求に対する受理または却下、閲覧申請または証明申請に対する受理または却下、異議申立ての却下等が供託官の処分の典型である。
b) 不当な処分であること
審査請求は供託官の処分の是正を求めるものであるため、審査請求の対象となる供託官の処分は供託官の行為によって是正できるものでなければならない。供託官に是正できない行為については、仮に供託官が審査請求に理由があると認めた場合であっても供託官はその是正ができず、審査請求によることはできない。
② 法律上の利害関係人からの請求であること
審査請求は、供託官の不当処分につき法律上の利害関係を有する者に限り認められる。
法律上の利害関係を有しない者の審査請求は不適法として却下される。
(3) 審査請求の手続
① 審査請求
審査請求は供託官を経由してしなければならない(供託法1条の5)。処分をした供託官に再考の機会を与えるために、供託官を経由してしなければならず、監督法務局・地方法務局長へ直接提出することは認められていない。
② 審査請求の申立期間
供託官の処分に対する審査請求は、処分の是正が法律上可能であり、その利益の存する限り、いつでもこれをすることができる。
③ 審査請求に対する供託官の措置
(a) 審査請求に理由があると認めるとき
審査請求がなされると供託官はこれを審査し、処分についての審査請求に理由があると認めるときまたは審査請求に係る不作為に係る処分をすべきものと認めるときは、相当の処分をしてその旨を審査請求人に通知しなければならない(供託法1条の6第1項)。
(b) 審査請求に理由がないと認めるとき
供託官は、上記(a)に該当する場合を除き、意見を付して審査請求があった日から5日以内にこれを監督法務局または地方法務局の長に送付しなければならない(供託法1条の6第2項前段)。これによって事件は監督法務局または地方法務局の長に移ることになる。この場合において、監督法務局または地方法務局の長は当該意見を審理員〔行政不服審査法11条2項〕に送付するものとする(同項後段)。
④ 法務局または地方法務局の長の審査
法務局または地方法務局の長は、処分についての審査請求に理由があると認めるときまたは審査請求に係る不作為に係る処分をすべきものと認めるときは、供託官に相当の処分を命じなければならない(供託法1条の7第1項)。
法務局または地方法務局の長は、審査請求に係る不作為に係る処分についての申請を却下すべきものと認めるときは、供託官に当該申請を却下する処分を命じなければならない(同条2項)。
(4) 再審査請求
供託官の不当処分については行政庁内部で2審の審査を受けられる構造になっているが、法務局・地方法務局の長の裁決に対し不服があっても法務大臣への再審査請求は供託法上認められていない。
■行政訴訟
(1) 行政訴訟の意義
供託官の処分も行政庁の処分であるため、行政処分の取消しの訴えの対象となるため、当該処分により権利・利益を侵害された者は、当該処分をなした供託官を被告として処分取消しの訴えを提起することができる。この行政訴訟は裁判所に対してなされるものであり、行政機関に対してなす審査請求とはその性格を異にするため、審査請求をせずに直ちに行政訴訟を提起することが可能である。
また、一旦審査請求をしたがそれが棄却された場合でも、供託官の処分の取消しを求めて行政訴訟を提起することも可能である。
(2) 提訴期間
この訴えは、供託官の処分があったことを知った日または棄却の裁決があったことを知った日から6か月以内、もしくは処分または裁決の日から1年以内に提起しなければならない。ただし、正当な理由があるときは、この限りではない(行訴法14条1項2項)。