• 供託法ー11.特殊な供託手続
  • 1.特殊な供託手続
  • 特殊な供託手続
  • Sec.1

1特殊な供託手続

堀川 寿和2022/02/08 10:39

1.代供託

(1) 代供託の意義

代供託とは、供託した有価証券の償還期限が供託中に到来した場合に、当該有価証券を供託したまま内部手続により償還を受け、その償還金ついて供託を継続する手続をいう。供託の目的物を有価証券から償還金たる金銭に変更する手続である。

 

(2) 代供託を請求できる者

代供託を請求できる者は、供託物を受け取るべき者である。つまり、原則として供託者または被供託者である。なお、供託者、被供託者に対する差押債権者からも代供託の請求ができる(明44.11.15821号)。

 

(3) 代供託の手続

代供託を請求しようとする者は、代供託請求書を正副2通、供託所に提出しなければならない(供託規211項)。

附属供託

(1) 附属供託の意義

附属供託とは、供託有価証券に利息・配当金が生じた場合に、これを従前の供託有価証券に附属して一体性あるものとして供託する手続のことである(供託法4条)。供託有価証券の利息、配当金の支払期が到来したときに、これを従前の供託物と併せて供託することにより、有価証券上の供託の効力をそれら利息・配当金による金銭供託金の上にも一体として及ぼさせる手続である。

 

(2) 代供託を請求できる者

附属供託を請求できる者は、供託物を受け取るべき者である。

 

(3) 附属供託の手続

附属供託請求書を正副2通、供託所に提出しなければならないこと等、代供託の場合と同様である(供託規21条)。

 

供託物の差替え

(1) 供託物の差替えの意義

① 意義

供託物の差替えとは、営業保証供託、裁判上の担保(保証)供託等担保の目的物として金銭または有価証券を供託している場合において、監督官庁や裁判所の承認を得て、新たな供託をして、従前の供託物を取り戻す手続きである。供託した金銭を有価証券に、供託した有価証券を金銭または他の有価証券に変換することである。供託物の有する一定の担保価値が維持されれば、供託の目的が達せられるため、供託物を同等の価値を有する他の物に変換しても何ら問題ないためである(大11.9.4民甲3313号)。

 

② 趣旨

供託した有価証券の償還期限が到来したため、償還を受けるため別の有価証券に供託物を変更したり、供託した有価証券の価額が担保額を上回ったため、売却するため別の有価証券に変更したりすることができると便利であるところから認められる。また、供託した金銭を利用する必要が生じたため金銭とは別の有価証券を供託物にしたりすることもあり得る。

 

(2) 差替えの態様

① 態様

(イ)有価証券を金銭に差し替える場合

(ロ)金銭を有価証券に差し替える場合

(ハ)有価証券を別の有価証券に差し替える場合

 

② 一部差替

担保額に変更がなければ、一部の差替えも認められる。営業保証供託が金銭でなされている場合にその一部を有価証券に差し替えることができる(昭42.1.9民甲16号)。1件の供託で数枚の有価証券を供託している場合に、有価証券の一部を他の有価証券に差し替えることも可能である。有価証券の一部につき償還期限が到来した場合に、一部差替えを認める必要性があるためである。

 

(3) 差替えの要件

① 主務官庁等の承認があること

裁判上の担保(保証)供託の場合は、裁判所の担保変換決定(民訴法、民執法152項、民保法42項)が必要であり、営業保証供託では監督官庁の承認が必要な場合もある。

 

② 供託物取戻請求権が譲渡・質入れされていないこと、差押えその他の処分の制限がなされていないこと

供託物取戻請求権が差し押えられたときは、差替えはできない。差替えによる従前の供託物の取戻しは通常の払渡しとなんら異なるものではないためである。

 

 

先例

(昭36.7.19民甲1717号)

 

供託金取戻請求権に対し国税滞納処分により差押えの通知があった後は差替えは認めるべきではなく、差替えのための新供託がなされたときは、それを錯誤の場合に準じて取り戻すことができる。

 

(4) 差替えの手続

この差替手続は、先に新たに変換すべき供託物を供託した後に、従前の供託物を取り戻すという、供託者の一連の2つの行為によって構成されている。したがって、供託手続上は、新たな供託と従前の供託物の取戻しという独立した2つの手続によるため、代供託と異なり、前後の供託には同一性がないことになる。