- 供託法ー10.供託金利息・供託有価証券利札の払渡手続
- 1.供託金利息・供託有価証券利札の払渡手続
- 供託金利息・供託有価証券利札の払渡手続
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1供託金利息・供託有価証券利札の払渡手続
■供託金と利息
(1) 供託金に付される利息
供託金には、法務省令(供託規33条)の定めるところにより利息が付される(供託法3条)。
(2) 供託金の利率等
供託金利息は、1年について0.0012%とする(供託規33条1項)。
供託金の利息は、供託金受入れの月および払渡しの月については付されない(供託規33条2項)。
したがって、同じ年の1月に供託して同年10月に払渡請求をしたときは、2月から9月までの8か月分について利息が付されることになる。
また、供託金の金額が1万円未満であるときまたは供託金に1万円未満の端数かあるときは、その全額または端数金額には利息は付されない。したがって、供託金の額が9000円であるときは、利息はまったく付されず、また、供託金が10万5000円の場合は、10万円の部分については利息が付されるが、5000円の部分について利息は付されない(供託規33条2項)。
■供託金利息の払渡手続
(1) 利息の払渡請求権者
① 原則
供託金の利息は、供託金の払渡しを請求する者が請求権者となる。具体的には、取戻請求の場合が供託者、還付請求の場合が、被供託者である。
② 供託物払渡請求権の譲渡等があった場合
供託がされた後に供託物払渡請求権が譲渡された場合は、その権利移転の日、すなわち供託所に、譲渡通知が送達された日を基準として、その日の前日までの利息は譲渡人に、その日以後の利息は譲受人にそれぞれ日割計算で支払われる(昭33.3.18民甲592号)。
③ 保証供託の場合
保証供託の場合は、担保の効力はその目的物たる元金のみにおよび、利息にまでは及ばないため、利息の払渡請求権者は供託者である(昭37.6.7民甲1483号)。したがって、営業により損害を受けたとして、営業保証金として供託された金銭の還付を請求する者が、供託金利息も併せて払渡しを受けることはできないことになる。
(2) 利息の払渡時期
① 原則
供託金の利息は、元金と同時に払い渡すのが原則である(供託規34条1項)。元金と利息とが合算して支払われる。
② 例外
ただし、元金の受取人と利息の受取人とが異なる場合には元金と同時に払い渡すことができないため、元金を払い渡した後、利息を払い渡すことになる(供託規34条1項ただし書)。
供託中に供託物払渡請求権が譲渡、差押え・転付され、元金の受取人と利息の受取人とが異なることとなった場合がその例である。譲渡人は、譲受人が供託金および譲渡後の利息の払渡しを受けた後でなければ、譲渡前の利息の払渡しを受けることができない。
③ 保証供託の場合
保証として金銭を供託した場合には、毎年供託した月に応当する月の末日後に、同日までの利息を払い渡すことができる(供託規34条2項)。たとえば、令和2年3月10日に営業保証金の供託をした場合翌年の令和3年4月1日以降に令和2年分の供託金についての利息を受け取ることができることになる。保証供託の場合、保証として供託したのは元金だけで利息まで保証の対象となるわけではないため、本来であればいつでも利息のみを独立して払渡請求ができるはずであるが、事務処理の便宜上、1年分まとめて払渡請求させるようにしたものである。このように保証供託では、元金の払渡しをしないときでも利息だけの払渡請求が認められる。
(3) 利息の払渡手続
① 元金と利息の払渡請求
元金とともに利息の払渡しを受けるときは、供託金払渡請求書を提出すれば足り、別に供託金利息請求書を提出する必要はない。供託官は、利息の計算をして元金と利息を合算した小切手を交付する(供託規28条1項)。つまり、利息の支払を求める旨や、利息金額を記載する必要はない。
② 利息のみの払渡請求
a) 供託金利息請求書の提出
元金と利息の払渡請求権者が異なる場合や、保証供託の利息の払渡請求をする場合のように、利息のみの支払請求をするときは、供託金利息請求書を供託所に提出しなければならない(供託規35条1項)。利息のみの支払請求の場合は、供託金利息請求書に供託金額を記載しなければならない(供託規35条2項2号)。
b) 添付書類
供託金利息の請求書には、利息の払渡しを受ける権利を有することを証する書面を添付しなければならない(供託規35条3項)。
(イ)利息請求権の譲渡があった場合
譲渡証書等が利息の払渡しを受ける権利を有することを証する書面にあたるが、副本ファイルの記録から利息の払渡しを受ける権利を有することが明らかであるときは添付の必要はない(同条ただし書)。
(ロ)営業保証供託の場合
利息の払渡請求の場合、副本ファイルから供託者が払渡しを受ける権利を有することが明らかであり、添付は不要である。
(ハ)供託物払渡請求権の譲渡、差押え・転付により譲渡人、被転付債権者に払い渡す場合
債権譲渡通知や差押・転付命令の送達により払渡しを受ける権利を有することが明らかであるため、添付を要しない。
(4) 供託有価証券利札の払渡手続
① 供託有価証券利札の払渡請求
保証供託の場合、担保の効力は供託有価証券の利札にまで及ばない(昭37.6.7民甲1483号)。
したがって、営業保証供託や裁判上の担保(保証)供託等の保証供託において、有価証券が供託されている場合、当該有価証券に付されている利札の償還期が到来したときは、供託者は、その利札の払渡しを請求することができる(供託法4条ただし書)。
② 払渡請求手続
a) 払渡請求の時期
渡期の到来した利札についてはいつでも払渡請求ができる。なお、渡期到来前になされた払渡請求は認可されない。
b) 供託有価証券利札払渡請求書の提出
利札の払渡しを請求するには、供託有価証券利札払渡請求書2通を供託所に提出しなければならない(供託規36条1項)。
c) 添付書類
利札の払渡請求をしようとするときは、払渡しを受ける権利を有することを証する書面を添付しなければならない(供託規36条3項、35条3項)。ただし、副本ファイルの記録により払渡しを受ける権利を有することが明らかな場合はこの限りではないため、たとえば、供託者が払渡請求をするときは添付の必要がない。
d) 利札の払渡し
供託官は、利札の払渡請求の当否を判断して払渡しの請求を理由ありと認めるときは、供託有価証券利札払渡請求書に払渡しを認可する旨を記載し、その1通に記名押印してこれを請求者に交付する(供託規36条3項、29条2項)。そして、請求者は、払渡しを認可する旨を記載された供託有価証券利札払渡請求書を日本銀行またはその代理店に提出して利札の払渡しを受けることになる。