- 供託法ー9.払渡請求の認可と供託物の交付
- 1.払渡請求の認可と供託物の交付
- 払渡請求の認可と供託物の交付
- Sec.1
1払渡請求の認可と供託物の交付
■払渡請求の認可
(1) 供託官の審査
供託官は、払渡請求書が提出されると、請求が適法であるか否かを審査する。その範囲は供託物払渡請求書およびその添付または提示書類、供託所保管の資料に基づく形式的審査主義による。
審査の結果、払渡請求を認可すべきであると認めるときは、払渡しを認可して供託物を請求者に交付する。
(2) 却下
供託官は、請求が不適法と認めるときは却下する(供託規31条)。却下は、却下決定書を作成し、これを請求者に交付しなければならない(供託規21条の7)。
オンラインによる請求(規38-②)を却下する場合は、却下決定書に係る電磁的な記録を提供することができる(供託規45条)。
■供託物の交付
(1) 金銭の払渡し
① 小切手の交付
供託物が金銭の場合は、供託物払渡請求書に供託官が払渡しを認可する旨を記載して押印し、請求者にも当該請求書に受領を証させ、これを受領証として日本銀行宛の小切手を振り出して交付する(供託規28条1項)。なお、現金の交付はなされない。
② 預貯金振込み、隔地払いの場合
払渡請求書に、隔地払いや預貯金振込みによる旨等の記載がなされているときは、それぞれの手続によって払渡しがなされる。預金または貯金への振込みの方法による供託金の払渡しについては、請求者またはその代理人の預貯金に振り込まなければならない。
(2) 有価証券の払渡し
① 供託所における払渡手続
供託物が有価証券の場合は、供託物払渡請求書は2通提出する必要がある。供託官は、その2通ともに払渡し認可の旨を記載し、その1通について押印のうえ請求者に払渡しの認可の記載のある供託物払渡請求書の受領を証させて、これを受領証として供託官が記名・押印した他の1通を請求者に交付する(供託規29条1項)。
② 日本銀行における払渡手続
有価証券は日本銀行本店・支店またはその代理店で保管しているため、払渡請求者は供託所で認可して交付された払渡請求書を、有価証券を保管している銀行に呈示する。銀行は請求が適正であれば有価証券を交付する。
(3) 振替国債の払渡し
供託物が振替国債である場合も、供託物払渡請求書は2通必要である。供託官は、供託振替国債払渡請求を理由があると認めるときは、供託物払渡請求書に払渡しを認可する旨を記載し、その1通に記名押印してこれを請求者に交付しなければならない(供託規29条2項)。
(4) オンラインによる払渡請求
オンラインの方法により供託金または供託金利息の払渡しの請求をするときは、預貯金振込みの方法または国庫金振替の方法によらなければならない(供託規43条1項)。
(5) 留保付払渡請求
① 留保付還付請求の意義
留保付還付請求とは、債権の全額であるとしてなされた供託金を、債権の一部として受諾する旨を留保して還付請求をすることをいう。たとえば、地代・家賃の増額請求の際の受領拒否を理由とする弁済供託の場合、被供託者が無条件に還付を受けるとその供託賃料を認めたかのような印象が残って不都合なことがある。そこで、それを賃料の全額としてではなく、一部として受領することが認められれば、被供託者である貸主としても資金を活用できて便利である。このように、留保付払渡しは、主として弁済供託の金額をめぐり争いがある場合に問題となる。
② 留保付還付請求の可否
受領拒否をと理由する弁済供託において債務額について争いがある場合、債務者が債務の全額として供託した金額を債権者が受領したときは、特段の事情がない限り債務は消滅することになる(最昭33.12.18)。そこで、債務額につき争いがある場合には、被供託者は債務額が確定するまで事実上還付請求できないことになる。そこで、判例はこの場合、債務者が全額として供託した金額を債権者が一部弁済に充当する旨の留保を付して受領することを認め、その場合は一部弁済の効力が生ずるにすぎないことを認めた(最昭38.9.19)。実務でも留保付還付請求を認め、「供託受諾、ただし債権額の一部に充当する」旨の留保を付した払渡しを認可してよいとしている(昭42.1.12民甲175号)。
先例 |
(昭38.6.6民甲1669号) |
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家賃弁済供託金につき、損害賠償金として供託を受諾して還付を受けることはできない。 |
⇒ 家賃として供託された供託金については、家賃として還付請求する必要がある。
↓ したがって
先例 |
(昭39.7.20民甲2591号) |
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家賃の弁済供託後、被供託者から損害金として受諾する旨の留保を付した受諾書の提出があっても、供託者は取戻請求権を失うものではない。 |
■支払委託に基づく払渡し
(1) 意義
執行供託や一部の営業保証供託のように、その供託物に対して執行裁判所その他の官庁、公署の決定(配当等)によって払渡しが行われるときは、その配当等実施機関による供託所への支払委託により払渡しが行われる。
(2) 支払委託がなされる場合
民執156条1項または2項の規定により、第三債務者が供託した供託金等については、執行裁判所が主導して払渡しが行われる。また、執行供託に限らず、官公署の決定により払渡しが行われるべき場合にもこの方法が採用される。
(3) 支払委託に基づく払渡手続
配当等を実施する執行裁判所その他の官公署は、支払委託書を供託所に送付し、かつ、払渡しを受けるべき者に払渡しを受けるべき金額を記載した証明書を交付する(供託規30条1項)。
供託金払渡手続支払委託の方法により払渡しを受けようとする者は、供託物払渡請求書に、資格証明書、印鑑証明書、委任状等払渡請求の際に要求される一般の添付書面のほか、この証明書を添付しなければならない(供託規30条2項)。