• 供託法ー7.供託物払渡手続の通則
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1供託物払渡手続の通則

堀川 寿和2022/02/08 10:15

供託物の還付と取戻し

(1) 供託物の払渡し

供託された物は、通常供託物の払渡請求がなされてその目的を達成する。この供託物の払渡しには、「供託物の還付」と「供託物の取戻し」の2種類がある。

 

 

(2) 供託物の還付

供託物の還付は、供託の被供託者が払渡しを受けて、これにより供託関係はその本来の目的を達して終了することになる。

 

(3) 供託物の取戻し

供託物の還付に対して、供託物の取戻しは、供託者に対して払渡しがなされる場合であり、これによって供託が本来の目的を達しないまま終了する場合である。

 

供託物払渡手続の開始

供託物の払渡しを請求する者(供託物の還付を受けようとする者または供託物の取戻しをしようとする者)は、供託物払渡請求書を、供託物の種類に応じて(有価証券または供託振替国債の払渡しの場合は2通)所定の添付・提示書面を添えて供託所に提出しなければならない(供託規221項)。なお、口頭による請求は認められない。

つまり、金銭の払い渡しの場合は現金取扱庁、非現金取扱庁を問わず、供託物払渡請求書の提出は1通で足りるが、有価証券や振替国債の場合は2通必要ということである。

このように有価証券または振替国債の場合に2通必要なのは、1通は供託所において受領証として保管し、もう1通は請求者が日本銀行から有価証券の交付を受けるための権利証として利用するものであり、両者の機能が異なるからである。したがって、有価証券の払渡請求がなされた場合、供託官は、払渡請求書に払渡認可の旨を記載して記名押印し、その1通に請求者の受領を証させ、他の1通を請求者に交付する(供託規291項)。そして、請求者はこの払渡請求書を日本銀行に持参して、供託有価証券の交付を受けることになる。これに対し、金銭の払渡請求がなされた場合は、供託官が小切手を請求者に振り出し、請求者がこの小切手を日本銀行に提出して現金の交付を受ける(供託規281項後段)。

供託物払渡請求書の記載事項

供託物払渡請求書には次の事項を記載し、請求者またはその代表者もしくは管理人もしくは代理人が記名押印しなければならない(供託規222項)。

cf. 供託の申請時に押印は不要であることと比較!

 

(1) 供託番号

供託物払渡請求者は、払渡請求書に供託書正本または供託通知書に記載されている供託番号を記載しなければならない(供託規2221号)。どの供託物の払渡しであるかを特定するためである。

 

(2) 供託金額、供託有価証券の名称、供託振替国債の銘柄等

金銭の場合は払渡しを請求する供託金額、有価証券の場合は払渡しを請求する供託有価証券の名称、総額面、券面額(券面額のない有価証券についてはその旨)、回記号、番号および枚数または供託振替国債の銘柄および金額を記載する(供託規2222号)。

 

(3) 払渡請求の事由

供託物の払渡請求事由は、還付請求と取戻請求で異なる。払渡請求書の記載があるものについては、○印を記載すればよいが、記載がないものについては払渡請求者自らが記載する(供託規2223号)。

① 還付請求の払渡請求事由

1. 供託受諾(弁済供託)

2. 担保権実行(保証供託)

3. 配当(執行供託)

4. 没取(没取供託)

② 取戻請求の払渡請求事由

1. 供託錯誤

2. 供託原因消滅

3. 供託不受諾

 

(4) 還付、取戻しの別

払渡請求の根拠を明らかにするため、払渡請求の事由とともに還付または取戻しの別も記載する(供託規2224号)。所定欄に〇で囲むだけである。

 

(5) 隔地払い、預貯金振込みを受けようとするときはその旨

① 隔地払い

払渡請求者は、供託所の保管金取扱者である日本銀行所在地外の日本銀行その他供託官の定める銀行において供託金の払渡しを受けることができる。これを隔地払いという。請求者の便宜のためにその住所地またはもよりの銀行で支払を受けられる制度である。

② 預貯金振込み

預貯金振込みとは、供託物の払渡しを請求者またはその代理人の預貯金口座に振り込む方法によっても行うことである。この場合、その旨を記載する必要がある(供託規2225号)。具体的には、払渡請求書該当欄に〇を付し、所要の記載をすることにより明らかにすればよい(供託規2226号)。

 

(6) 国庫金振替の方法により供託金の払渡しを受けようとするときはその旨

供託金の払渡請求者が官庁または出納官吏であるときは、国庫金振替の方法による。この場合もその旨を記載する必要がある(供託規2226号)。

 

(7) 供託振替国債の払渡しを請求するときは、請求者の口座(供託規2227号)

 

(8) 請求者の氏名・住所等

請求者の氏名および住所、請求者が法人であるときまたは法人でない社団・財団であって代表者もしくは管理人の定めのあるものであるときは、その名称、主たる事務所および代表者または管理人の氏名(供託規2228号)

 

(9) 請求者が供託者または被供託者の承継人であるときは、その旨(供託規2229号)

 

(10) 代理人による払渡請求の場合は、代理人の氏名・住所(供託規22210号)

 

(11) 供託所の表示(供託規22211号)

 

(12) 払渡請求の年月日(供託規22212号)