- 供託法ー6.供託の申請
- 1.供託の申請
- 供託の申請
- Sec.1
1供託の申請
■供託書の提出
供託申請行為は、要式行為とされているため、供託申請者は必ず法定の様式を充足した書面を提出しなければならない。供託規則13条1項は、金銭または有価証券の納付をしようとするものは、法定された様式の供託書の提出を要求しており、申請人の作成した適宜のものでは足りない。
■供託書の記載事項
供託所に提出する供託書には、供託規則13条2項に掲げる事項を記載しなければならない。
(1) 供託者の氏名および住所
供託者が法人であるときまたは法人でない社団もしくは財団であって、代表者もしくは管理人の定めのあるものであるときは、「その名称、主たる事務所および代表者または管理人の氏名」が記載事項とされている。
※ なお、供託者の押印は要求されていない。
供託者 |
供託書記載事項 |
自然人 |
氏名および住所 |
法人 |
名称(商号)、主たる事務所(本店)および代表者の氏名 |
法人格なき社団・財団 |
名称、主たる事務所および代表者または管理人の氏名 |
本人に代わって第三者が供託する場合には、供託者欄に当該第三者の氏名・住所を表示し、供託の原因たる事実欄または備考欄で第三者供託である旨を明らかにする(昭18.8.13民甲511号)。なお、弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者による第三者弁済は本人の意思に反してすることができない(民法474条2項)が、債務者の承諾書の添付は必要ないとされている(昭41.12.15民甲3367号)。
(2) 代理人により供託する場合には、代理人の氏名および住所
判例 |
(最昭50.1.20) |
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供託者が債務者本人の代理人としてする意思で、しかし本人のためにすることを表示することなく供託した場合であっても、被供託者において本人のためにされたものであることを知り、または知りうべきであったときには、この弁済供託は債務者本人から被供託者に対するものとしての効力を有する。 |
(3) 供託金の額、供託物が有価証券の場合、供託有価証券の名称、総額面、券面額(券面額のない有価証券についてはその旨)、回記号、番号、枚数ならびに附属利賦札およびその最終の渡期
(4) 供託の原因たる事実
(5) 供託を義務付けまたは許容した法令の条項
弁済供託の場合には「民法第494条」、執行供託の場合は「民事執行法第156条1項または2項」、営業保証供託の場合は、たとえば「宅地建物取引業法第25条」等である。
(6) 被供託者が特定できるときは、被供託者の氏名および住所
被供託者が法人または法人でない社団もしくは財団であるときは、「その名称および主たる事務所」が記載事項とされている。なお、被供託者が法人等の場合、代表者の氏名まで記載する必要はない。
① 被供託者が未成年者、成年被後見人であるとき
本人の住所・氏名を記載すれば足り、法定代理人の住所・氏名を記載する必要はない。
② 被供託者が所在不明の場合
弁済供託で被供託者は特定されているが所在不明のときは、最後の住所または元の住所と氏名を記載して供託することができる(昭40.6.2民甲123号)。この場合、その冒頭に「最後の住所」と記載する。
③ 債権者不確知の場合
二人以上の者が同一債権を主張していて、債務者においていずれが真の債権者か確知できない場合等になされる債権者不確知を理由とする弁済供託の場合、被供託名の記載は、「(住所)甲または(住所)乙」とすればよい(昭29.8.28民甲1789号)。
④ 債権者の相続人が不明の場合
債権者が死亡し、その相続人が不明のときは、「(住所)○○の相続人」と記載する。
⑤ 裁判上の担保(保証)供託の場合
裁判上の担保(保証)供託の場合には、相手方の住所・氏名を記載する。
⑥ その他
執行供託、営業保証供託、保管供託については、被供託者の氏名および住所の記載は不要である。
執行供託の場合、執行債務者が還付請求権を有するわけではなく、営業保証供託および保管供託の場合、供託する時点で被供託者が誰になるか不明であるからである。
(7) 供託により質権または抵当権が消滅するときは、その質権または抵当権の表示
(8) 反対給付を受けることを要するときは、その反対給付の内容
弁済供託において、反対給付を条件として供託する場合には、供託者は供託書の「反対給付の内容」欄に、反対給付の内容を記載しなければならない。たとえば、「本供託に係る売買の目的物件を供託者に引き渡すこと」「供託原因欄に記載の不動産の所有権移転登記」というように記載する。
(9) 供託物の還付または取戻しについて官庁の承認、確認または証明等を要するときは、当該官庁の名称および事件の特定に必要な事項
(10) 裁判上の手続に関する供託については、当該裁判所の名称、件名および事件番号
(11) 供託所の表示
(12) 供託申請年月日
■供託書の添付書類
(1) 法人の代表者等の資格証明書
① 登記された法人が供託する場合
登記された法人が供託をしようとするときは、登記所の作成した代表者の資格を証する書面を提示しなければならない(供託規14条1項)。なお、前述のとおり供託所と登記された法人の代表者の資格を証明すべき登記所が同一であるときは、簡易確認手続によることができる。
cf. 登記された法人を被供託者として供託する場合に登記所の作成した被供託者の代表者の資格を証する書面の添付は不要である。
② 登記されていない法人が供託する場合
供託者が登記のない法人(国家公務員共済組合、健康保険組合、土地区画整理組合等)であるときは、代表者の資格を証する書面を供託書に添付しなければならない(供託規14条2項)。
③ 法人格なき社団・財団が供託する場合
法人でない社団または財団であって、代表者や管理人の定めのあるものが供託しようとするときは、当該社団または財団の定款・寄附行為および代表者または管理人の資格を証する書面を供託書に添付しなければならない(供託規14条3項)。法人格なき社団・財団の代表者または管理人の資格を証する書面とは、具体的には総会等の代表者選任議事録、代表者または管理人を定めた規約、代表者または管理人となることを約した委任契約書ないし委任状等がこれにあたる(昭26.10.30民甲2105号)。
④ 破産管財人が供託する場合
破産管財人、会社更生管財人、保全管理人、不在者財産管理人などが供託する場合には、資格証明書としては裁判所の選任を証する書面を添付なければならない(昭59.2.27民四1122号)。
なお、裁判所が選任した各管財人または保全管理人がある場合、その旨の登記が嘱託により会社の登記記録になされるため、これらの者の資格を証する書面としては登記所の作成した登記事項証明書等の提示でもよいとされる。
Point 供託所に提出または提示すべき代表者または管理人の資格を証する書面であって官庁または公署の作成に係るものは、供託規則に別段の定めがある場合を除き、その作成後3月以内のものに限る(供託規9条)。
(2) 代理人の権限を証する書面
① 代理権限証書の提示
代理人によって供託する場合は、代理人の権限を証する書面を提示なければならない(供託規14条4項)。他人の代理人と称して供託してくるようなことは考えにくいため、添付ではなく提示で足りる。
なお、支配人等登記のある代理人については、代表者の資格証明同様、簡易確認手続によってその権限を証明することができる。
② 代理権限を証する書面の内容
代理人の種類 |
代理権限を証する書面の内容 |
任意代理人 |
委任状 |
法定代理人 (*1) |
戸籍謄抄本・登記事項証明書等 |
会社の支配人 (*1) |
会社の登記事項証明書 |
不在者財産管理人、 相続財産管理人 (*2) 遺言執行者 |
裁判所の決定書、審判所の謄本等 |
(*1)代理権限を証する書面として官庁または公署作成の書類を提示するには、作成後3か月以内のものでなければならない(供託規9条)。
(*2)これらの者はその職務上の地位において自らの名で供託者となって供託することができる。
(3) 振替国債の供託
供託者が振替国債を供託しようとするときは、その振替国債の銘柄、利息の支払期および償還期限を確認するために必要な資料を提供しなければならない(供託規14条の2)。
振替国債とは、平成15年1月27日以降に発行される国債で国債証券により受渡しや保管をおこなうことに代えて、帳薄への記載により受渡しや残高管理をおこなう国債である。ペーパーレス化により受渡リスク・コストの軽減、約定から決済までの期間短縮等が図られ、わが国の証券市場の活性化が図られる。