- 供託法ー4.保証(担保)供託
- 1.保証(担保)供託
- 保証(担保)供託
- Sec.1
1保証(担保)供託
■保証(担保)供託
(1) 保証(担保)供託の意義
① 保証供託の意義
将来発生するかもしれない損害賠償債権の担保のためにする供託を保証供託という。
② 保証供託の種類
保証供託には、次の3つの種類がある。
(イ)営業保証供託 (ロ)裁判上の担保(保証)供託 (ハ)その他の保証供託 |
(2) 営業保証供託
① 営業保証供託の意義
宅建業者や旅行業者などは、営業の性質上多数の取引相手の存在が予定され、債権・債務を有することが通常である。また、原子力事業者や鉱業などもその事業の性質上、多数の者に損害を与えることがあり得る。そこで、そのような者と取引する者を保護するために、このような事業を営む者に一定の金銭や有価証券等を供託させ、取引債権者や損害賠償請求権者の担保とすることにした。これが営業保証供託である。
② 営業保証供託の目的物およびその額
供託する金銭・有価証券の額ないしその算定基準は、供託を命じた供託根拠法規によって異なる。
たとえば、宅建業法では、主たる事業所とその他の営業所の数に応じて供託の金額が定められている(宅建業法25条〜30条)。
③ 供託金に対する権利の実行方法
営業保証金に対する還付方法には、次の2つの方法がある。
(イ)債権者が個別に、還付請求権の存在を証明して供託物の還付を請求する方法
債権者が供託物払渡請求書に、還付を受ける権利を有することを証する書面を添付して個別に権利を行使する方法である。この方法は早い者勝ちになり、営業保証供託制度の趣旨に反すると批判される。
(ロ)監督(登録)行政庁等の行う特別の配当手続を設け、供託物を還付する方法
債権者の権利実行の申立て等に基づき、配当実施権者が配当表を作成し、供託所に対しては供託書正本を添付して支払委託をするとともに、債権者には配当権者である旨の証明書を交付し、各債権者はそれを添付して各自で分割払渡請求をするというやり方である。この方法は、債権者平等が図れるメリットがある半面、権利行使の手続きが煩雑で、権利の実行にも日数がかかるなどのデメリットがある。
(3) 裁判上の担保(保証)供託
① 裁判上の担保(保証)供託の意義
裁判上の担保(保証)供託とは、当事者の訴訟行為または裁判所の処分により相手方が被るおそれがある損害を担保するための供託をいう。裁判上の立担保を必ず供託でしなければならないわけではない。この保証供託は、法令の規定により、供託によって担保を提供できるものとされている場合に限って許され、担保の提供が供託によるべきものとされていない場合には担保供託はできない(昭35全国会同会議)。
② 裁判上の担保(保証)供託の種類
裁判上の担保(保証)供託の根拠法令は、民事訴訟法、民事執行法、民事保全法等の中に個別に規定されている。
③ 供託金に対する権利の実行方法
これらの供託物の担保権者である被告や債務者などは、どうやってこの担保物にかかっていくかについて、民事訴訟法は、訴訟費用につき担保権者たる被告等は、供託された金銭または有価証券につき「訴訟費用に関し、他の債権者に先立ち弁済を受ける権利を有する(民訴法77条)」として、それが民事訴訟法、民事執行法および民事保全法にも準用されている(民訴法81条等、民執法15条2項、民保法4条2項)。つまり、それらの者が供託にかかる原因で損害を被ったときには、「還付を受ける権利を有することを証する書面」として被供託者が損害を被ったことを証明する損害賠償請求の確定判決またはそれと同一の効力を有する和解調書、認諾調書、調停調書、確定した仮執行宣言付支払督促等を添付して、供託所に対して直接還付請求をする方法により、その損害の填補を受けることとされている(平9.12.19民四2247号)。なお、この還付請求は強制執行手続ではないため、自己の権利を証明できるものであればよく確定判決は給付判決に限らず確認判決でもよい。また、確定判決等に代えて、債務の存在と還付を受けることを同意した供託者の印鑑証明書付の債務確認書または同意書でもよいとされている。
(4) その他の保証供託
各種の税法には、国税の延納や、その徴収を猶予する場合などに、将来のその納付や徴収を確保するために納税者に一定の担保を提供させることがある(国税通則法46条5項、6項、相続税法38条、酒税法30条の6等)。この場合、一定の振替株式等以外のものを担保に供するときは供託によることとされている(国税通則施行令16条)。