• 供託法ー2.供託の有効要件
  • 3.供託の当事者
  • 供託の当事者
  • Sec.1

1供託の当事者

堀川 寿和2022/02/07 16:21

供託の当事者

供託の関係者としては、供託をする側の「供託者」と、供託される側の「被供託者」、供託を受け入れる「供託所」に分類できる。供託者と被供託者をあわせて「供託当事者」という。

 

供託当事者能力

(1) 供託当事者能力の意義

供託手続の当事者となりうる能力を「供託の当事者能力」という。具体的には、供託者または被供託者となる能力のことである。

 

(2) 供託当事者能力

誰が供託の当事者能力を有するか(供託の当事者となれるか)については、供託法に規定がないため、民法や民事訴訟法その他の法令に従うことになる。供託法は、民法より手続法である民事訴訟法に近い取扱いがなされるため、訴訟当事者能力と同様に次の者に供託当事者能力が認められる。

① 自然人・法人

自然人や会社その他の法人は供託当事者能力を有する。民法上の権利能力、民事訴訟法の訴訟行為能力と同じ概念である。自然人である限り、未成年者、成年被後見人、意思無能力者でも供託の当事者(供託者または被供託者)となることはできる。また、法人である以上、登記のある法人であると、登記のない法人であるとを問わず、供託当事者能力は認められる。

② 法人でない社団または財団

法人でない社団または財団で代表者または管理人の定めのあるものは、供託当事者能力が認められる。民事訴訟法上、これらの者に訴訟当事者能力が認められるのと同様である。

したがって法人でない社団または財団は、団体自身の名をもって供託することができ、また、被供託者となることができる。

③ 民法上の組合

民法上の組合に供託当事者能力が認められるかについて、先例(昭26.10.30民甲2105号)は、供託者として組合名を表示し、組合長の記載があれば、委任状・契約書等によりその代理権が認められる限り受理してよいとする。民事訴訟法上、判例が組合に訴訟当事者能力を認めているのと同様である(最昭37.12.18)。

cf. 民法上の組合には、権利能力が認められていないことと比較!

供託の行為能力

(1) 供託の行為能力の意義

供託行為能力とは、自ら単独で有効な供託手続をなし得る能力である。供託手続を有効に行うためには、供託当事者能力を有するだけではなく、供託行為能力も有しなければならない。民法上の行為能力と同様である。

 

(2) 供託行為能力者

供託法上、行為能力については規定されていないため、民法その他の一般原則による。

したがって、民法上の行為能力者には供託行為能力がある。問題は、民法上の制限行為能力者である。制限行為能力者は供託行為能力が認められない場合がある。供託行為能力が認められない者のことを供託行為無能力者という。民法上の制限行為能力者の行為は、取り消すことのできる行為となるが、供託行為無能力者がした供託手続上の行為は、手続安定のため無効となる。民事訴訟における制限行為能力者の訴訟行為と同様である。

未成年者

成年被後見人

被保佐人

被補助人

 

未成年者

未成年者は単独で供託法上の手続を行うことはできず、法定代理人が代理してしなければならない。ただし、民法6条の営業許可を受け、または婚姻して行為能力が認められれば単独で供託することができる。これに対して、供託することについて法定代理人の同意があった場合でも、未成年者に供託行為能力は認められない。法定代理人の同意があっても未成年者に訴訟行為能力が認められないのと同様である。

 

② 成年被後見人

未成年者の場合と同様である。したがって、成年被後見人も単独で供託法上の手続を行うことはできない。また、成年後見人の同意があっても成年被後見人に供託行為能力は認められない

 

③ 被保佐人

被保佐人は、重要な財産上の行為については保佐人の同意を要するとされているため、供託申請(弁済供託の申請を除く)、弁済供託の受諸、供託物の取戻し・供託物の還付等をする場合には保佐人の同意が必要である。

 

④ 被補助人

被補助人は、民法131項に規定する重要な財産上の行為の一部について行為能力が制限されているため、被補助人の供託行為能力は、補助人に与えられた同意権や代理権の範囲によることになる。

したがって、訴訟行為を含めた民法131項に定める行為の大部分について補助人の同意を要する旨の審判があった場合には、原則として、供託手続に関する行為(弁済供託の申請を除く)については、補助人の同意を得て自ら行うべきであると解される。