- 民事保全法ー2.民事保全手続総則
- 1.民事保全の機関
- 民事保全の機関
- Sec.1
1民事保全の機関
■民事保全の機関
(1) 保全命令の機関
民事保全の命令(保全命令)は、申立てにより、裁判所が行う(民保法2条1項)。つまり、仮差押や仮処分命令を行う機関は裁判所である。もっとも保全命令は、急迫の事情があるときに限り、裁判長が発することができる(民保法15条)。
(2) 保全執行の機関
民事保全の執行(保全執行)は、申立てにより、裁判所又は執行官が行う(民保法2条2項)。
すなわち、仮差押え、仮処分の執行(保全執行)を行う機関は裁判所(保全執行裁判所)又は執行官である。民事執行における執行機関(民執法2条)と同様である。
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申立の要否 |
職権での可否 |
裁判所 |
執行官 |
保全命令 |
○ |
× |
○ |
× |
保全執行 |
○ |
× |
○ |
○ |
(3) 保全執行裁判所
① 裁判所が行う保全執行
裁判所が行う保全執行に関しては、民事保全法の規定により執行処分を行うべき裁判所をもって保全執行裁判所とする(民保法2条3項)。なお、民事保全法で規定する裁判所の管轄は専属管轄とされている(民保法6条)。
② 執行官が行う保全執行
執行官が行う保全執行の執行処分に関しては、その執行官の所属する地方裁判所をもって保全執行裁判所とする(民保法2条3項)。
■任意的口頭弁論
迅速性が要請される民事保全の手続に関する裁判は、口頭弁論を経ないですることができる(民保法3条)。したがって、裁判の形式は決定となる。民事保全は権利や権利関係の確定ではなく、仮定的な処分にすぎないからである。口頭弁論を開かないで審理する場合は、裁判所は当事者を審尋することができる(民保法7条)。
■担保の提供
民事保全法の規定により担保を立てるには、担保を立てるべきことを命じた裁判所又は保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に金銭又は担保を立てるべきことを命じた裁判所が相当と認める有価証券(社債、株式等の振替に関する法律278条1項に規定する振替債を含む。)を供託する方法その他最高裁判所規則で定める方法によらなければならない。ただし、当事者が特別の契約をしたときは、その契約による(民保法4条1項)。民事執行法の場合と同様である(民執法15条)。ここでいう、「裁判所が相当と認める有価証券」には、振替国債も含まれている。詳しくは、供託法にて!