• 民事執行法ー15.債務者の財産状況の調査
  • 2.財産開示手続
  • 財産開示手続
  • Sec.1

1財産開示手続

堀川 寿和2022/02/04 13:25

管轄裁判所

 債務者の財産の開示に関する手続(以下、財産開示手続という。)については、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄する(民執法196条)。

 

申立権者

(1) 債務名義を有する債権者

 金銭債権について、執行力ある債務名義の正本を有する債権者は、財産開示の申立てをすることができる。

 

(2) 一般の先取特権を有する債権者

 債務者の財産について、一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者も財産開示手続の申立てが認められる。

財産開示手続の要件

(1) 債務名義を有する債権者

 執行裁判所は、次のいずれかに該当するときは、執行力ある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者の申立てにより、債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければならない。ただし、当該執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行を開始することができないときは、この限りでない(民執法197条1項)。

強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より6か月以上前に終了したものを除く)において、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得ることができなかったとき(1号)

知れている財産に対する強制執行を実施しても、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明があったとき(2号)

 

(2) 一般の先取特権を有する債権者

 執行裁判所は、次のいずれかに該当するときは、債務者の財産について一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者の申立てにより、当該債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければならない(民執法197条2項)。

強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より6か月以上前に終了したものを除く)において、申立人が当該先取特権の被担保債権の完全な弁済を得ることができなかったとき(1号)

知れている財産に対する担保権の実行を実施しても、申立人が上記被担保債権の完全な弁済を得られないことの疎明があったとき(2号)

 

(3) 財産開示手続の実施の制限

 債務者(債務者に法定代理人がある場合にあっては当該法定代理人、債務者が法人である場合にあってはその代表者)が財産開示の申立ての日前3年以内に財産開示期日(財産を開示すべき期日をいう。)においてその財産について陳述をしたものであるときは、財産開示手続を実施する旨の決定をすることができない(民執法197条3項)。債務者に負担の大きい財産開示の繰り返しを避ける趣旨である。ただし、次に掲げる事由のいずれかがある場合は、この限りではない(同項ただし書)。

例外的に、3年以内であっても、財産開示の実施が認められる。

債務者が当該財産開示期日において一部の財産を開示しなかったとき(1号)

債務者が当該財産開示期日の後に新たに財産を取得したとき(2号)

当該財産開示期日の後に債務者と使用者との顧用関係が終了したとき(3号)

 

(4) 送達の決定

 民執法197条1項又は2項の決定(財産開示の決定)がされたときは、当該決定(2項の決定にあっては、当該決定及び同項の文書(一般先取特権を有することを証する文書)の写し)を債務者に送達しなければならない(民執法197条4項)。 cf 債権者に対しては、相当な方法で告知すれば足りる。

 

(5) 決定の効力発生

 民執法197条1項又は2項の決定(財産開示の決定)は、確定しなければその効力を生じない(民執法197条6項)。

 

(6) 不服申立て

 民執法197条1項又は2項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる(民執法197条5項)。