- 民事訴訟法ー12.債権及びその他の財産権に対する強制執行
- 2.金銭債権に対する強制執行
- 金銭債権に対する強制執行
- Sec.1
1金銭債権に対する強制執行
■金銭債権に対する執行手続
債務者が第三債務者に対して有する金銭債権に対する執行も、
その債権に対する差押え→換価(取立等)→満足(弁済)という3段階を経る。
金銭債権は目的物が金銭であるところから、換価、満足の方法に特殊性が現われる。
■差押手続
(1) 差押命令の申立て
申立ては、執行正本を添付して書面で行う。
(2) 執行裁判所
① 執行機関
債権執行は執行裁判所が執行機関となり、差押命令によって手続が開始される(民執法143条)。
② 管轄
債権執行は、原則として債務者の普通裁判籍所在地を管轄する地方裁判所が執行裁判所として管轄する。債務者の普通裁判籍がないときは、二次的に差し押えるべき債権の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する(民執法144条1項)。差し押えるべき債権の所在地は、第三債務者の普通裁判籍の所在地にあるものとする(同条2項)。
■債権執行の開始
(1) 差押命令
金銭の支払いを目的とする債権に対する強制執行(債権執行)は、執行裁判所の差押命令により開始する。
① 差押命令発令
差押命令は債務者及び第三債務者を審尋しないで発する(民執法145条2項)。密行性があるからである。執行裁判所は、申立てが適式かどうか、差押禁止債権でないか、超過差押え、無益差押えでないかなどを審査し、適法と認めれば差押命令を発する。被差押債権の存否、額などは審査せずに発するため、結局は、差し押えるべき債権が不存在な場合、差押命令は対象を欠き無効ということが生じうる。
② 第三債務者の陳述の催告
そこで、差押債権者の申立てがあるときは、裁判所書記官は、差押命令を送達するに際し、第三債務者に対し、差押命令送達の日から2週間以内に差押えに係る債権の存否その他の最高裁判所規則で定める事項について陳述すべき旨を催告しなければならない(民執法147条1項)。
第三債務者が上記の催告に対して、故意又は過失により陳述をしなかったとき、又は不実の陳述をしたときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる(同条2項)。
(2) 差押命令の内容
執行裁判所は差押命令において、債務者に対して債権の取立てその他の処分を禁止し、かつ第三債務者に対し債務者への弁済を禁止しなければならない(民執法145条1項)。差押命令は債務者及び第三債務者に送達しなければならない(同条3項)。
(3) 差押禁止範囲の変更に関する手続の教示
債務者は、給与債権などを差し押さえられることにより生活の維持が困難となる場合がある。このような場合、債務者は差押禁止債権の範囲の変更〔=範囲の拡張〕の申立てをすることができるが(民執法153条)、多くの債務者はこの制度を知らない。そこで、裁判所書記官は、差押命令を送達するに際し、債務者に対し、最高裁判所規則で定めるところにより、民執法153条1項又は2項の規定による当該差押命令の取消しの申立てをすることができる旨その他最高裁判所規則で定める事項を教示しなければならない(民執法145条4項)。この最高裁判所規則で定める事項とは、「差押命令の取消しの申立てに係る手続の内容」であり、この教示は書面でしなければならない(民執規133条の2)。
(4) 不服申立て
差押命令の申立てについての裁判(申立て却下、差押命令)に対しては執行抗告をすることができる(民執法145条6項)。