• 宅建業法ー8.書面の交付(37条書面)
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1総説

堀川 寿和2021/11/24 10:38

 本章からは毎年1~2問出題される。37条書面の必要的記載事項と任意的記載事項の各項目、及び売買の場合と貸借の場合の相違点など、細かい知識が多くある。重要事項説明との対比問題も出題されているため、そういった観点からのアプローチも必要である。

総説

 『37条書面』とは、契約締結後に交付すべき書面のことである。契約締結後、その契約から生じるトラブルを防止するため、宅建業者が、その契約内容を書面にして交付しなければならない。

 これが『37条書面』であるが、いわゆる『契約書』とは異なるものであるか否かが問題となる。この点に関しては、『37条書面』は契約書と同じでもよいし、『契約書』とは別々でもよいとされている。

 同じでよいというのは、契約書に37条書面に記載すべき事項が記載されていれば、それでよいということである。また、別でもよいというのは、契約書はそれとして作成し、別途37条書面を作成して契約当事者に交付すれば、それでもよいということである。

 その交付手続きに関し、宅建業法は次のように定める。

宅建業者は、
自ら当事者として契約する場合は、その相手方
代理・媒介により契約する場合には、両当事者
契約締結後遅滞なく
③ 37条書面に取引士に記名・押印させたうえ、交付しなければならない。







 交付の相手方は、代理の場合は「契約の相手方と代理の依頼者に」、媒介の場合は「両当事者に」とされているが、結局契約の「両当事者に」交付することになる。また、自ら契約の当事者となる場合は、自分で自分に交付するというのは無意味なので、「その相手方」にのみ交付すればよい。

交付時期は、契約締結後「遅滞なく」である。「遅滞なく」というのは、『媒介契約書面』の交付時期と同じであると考えればよい。37条書面に記名押印した取引士と、交付をする取引士は異なってもよい。

 また、37条書面の作成については、35条書面と同様、制限がなく、取引士ではない従業者が作成することができる。


 ここで『媒介契約書面』、『重要事項の説明書面』、『37条書面』についてまとめておこう。


媒介契約書面重要事項の説明書面37条書面
誰が宅建業者
いつ
媒介契約成立後、
遅滞なく
売買等の契約成立までの間
売買等の契約成立後、
遅滞なく

どこでどこでもよい
誰に依頼者に買主・借主両当事者
何を
業者の
記名・押印ある書面
取引士の
記名・押印ある書面
取引士の
記名・押印ある書面
どうする交付交付して説明交付


売買・交換・貸借の記載事項

 37条書面への記載事項は以下のとおり。

【37条書面の記載事項】

記載事項売買・交換貸借
① 当事者の氏名・住所

② 物件特定に必要な表示
③ 既存の建物であるときは、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項×
④ 代金(または借賃)などの額、支払時期など
⑤ 物件の引き渡し時期
⑥ 移転登記の申請時期×
⑦ 代金(または借賃)など以外の金銭の額など
⑧ 契約解除に関する内容
⑨ 損害賠償額の予定・違約金の内容
⑩ ローンのあっせんの内容・不成立のときの措置×
⑪ 目的物の種類・品質に関する契約不適合責任(担保責任)の履行に関する保証保険契約その他の措置×
⑫ 天災、不可抗力による損害負担の定め
⑬ 目的物の種類・品質に関する契約不適合責任(担保責任)の内容×
⑭ 公租公課の負担の定め×

※ ①~⑥は省略不可、⑦~⑭は、その旨の定めがなければ省略可


【重要事項説明書と同じ事項】

重要事項説明書と37条書面には共通の記載事項があり、上記⑦~⑪がそれである。
共通事項 

⑦ 代金(または借賃)など以外の金銭の額
⑧ 契約解除に関する事項
⑨ 損害賠償額の予定・違約金の内容
⑩ ローンのあっせんの内容・不成立のときの措置
⑪ 目的物の種類・品質に関する契約不適合責任(担保責任)の履行に関する保証保険契約その他の措置
ポイント上記と同じ項目であっても、重要事項説明書と37条書面では、下記の点が異なる。
1. 重要事項説明では必ず説明し、省略できない。
2. 37条書面では「あれば記載する」が、なければ「省略できる」。


売買・交換・貸借の記載事項

 37条書面への記載事項は以下のとおり。

【37条書面の記載事項】


記載事項売買・交換貸借
① 当事者の氏名・住所

② 物件特定に必要な表示
③ 既存の建物であるときは、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項×
④ 代金(または借賃)などの額、支払時期など
⑤ 物件の引き渡し時期
⑥ 移転登記の申請時期×
⑦ 代金(または借賃)など以外の金銭の額など
⑧ 契約解除に関する内容
⑨ 損害賠償額の予定・違約金の内容
⑩ ローンのあっせんの内容・不成立のときの措置×
⑪ 目的物の種類・品質に関する契約不適合責任(担保責任)の履行に関する保証保険契約その他の措置×
⑫ 天災、不可抗力による損害負担の定め
⑬ 目的物の種類・品質に関する契約不適合責任(担保責任)の内容×
⑭ 公租公課の負担の定め×

※ ①~⑥は省略不可、⑦~⑭は、その旨の定めがなければ省略可


【重要事項説明書と同じ事項】

重要事項説明書と37条書面には共通の記載事項があり、上記⑦~⑪がそれである。
共通事項 

⑦ 代金(または借賃)など以外の金銭の額
⑧ 契約解除に関する事項
⑨ 損害賠償額の予定・違約金の内容
⑩ ローンのあっせんの内容・不成立のときの措置
⑪ 目的物の種類・品質に関する契約不適合責任(担保責任)の履行に関する保証保険契約その他の措置
ポイント上記と同じ項目であっても、重要事項説明書と37条書面では、下記の点が異なる。
1. 重要事項説明では必ず説明し、省略できない。
2. 37条書面では「あれば記載する」が、なければ「省略できる」。